権力と陰謀 あらすじ(6)


権力と陰謀 大統領の密室
第6回「対決」
NHK総合 1978(昭和53)年8月6日(日)20時50分〜22時20分


 ワシントンDC市内の電話交換所に配置されたCIA職員ガスは、ホワイトハウス関係者や報道関係者がFBIにより盗聴されていることをサイモン・キャペルに示す。キャペルの報告からビル・マーチンはホワイトハウスが違法な情報収集活動を行っていると確信する。モンクトンとの対決が避けられないと悟ったマーチンは、CIAの活動を守るためとして、違法な情報収集の実態を調査するようCIA職員バーニー・ティビッツに命ずる。ティビッツは、ラース・ハーグランドに率いられた一味がアーサー・パライン宅に不法に侵入し盗聴器を仕掛ける様を撮影する。しかしマーチンは、ハーグランドの活動がホワイトハウス、とりわけモンクトン大統領の指示や承認の下で行われているという証拠を得るために調査を継続させる。マーチンのホワイトハウスとの対決姿勢に困惑するティピッツだったが、大統領執務室でハーグランドとモンクトンが同席する様子を捉えることに成功する。モンクトンはその時まさにハーグランドに、歴史的にみて(麻薬と)性道徳の乱れが国を滅ぼす要因であり、その意味からもマーチンのような輩はクビにしなければならないと説いていた。
 後刻、専用ヘリコプターでキャンプデイヴィッドに向かうモンクトン一行は、マーチンが突如面会を申し込んできたことを訝りながら、マーチンを解任することを確認する。


 翌朝、キャンプデイヴィッドのアスペンロッジに滞在するモンクトンを訪ねたマーチンは、解任を告げようとするモンクトンを制して違法活動とモンクトンの関与の証拠(盗聴のリストとハーグランド等の写真)を無言でモンクトンとタルフォードに示す。言葉を失うモンクトン。タルフォードは「何が欲しいんだ」と問う。国防総省により盗聴されている虞のあるロッジ室内を避け、マーチンはモンクトンを屋外に連れ出し取引を迫る。取引の内容は、ホワイトハウスの違法活動について口を噤む見返りとして、(1)プリミラリポートを破棄すること、(2)マーチンの中小国の大使に任命すること、(3)CIA生え抜きのダーウッド・ドリューを後任に任命すること、(4)CIAを妨害するFBIの活動を掣肘することである。渋々と取引に応じるモンクトン。
 後日マーチンはリンダを連れ大使としてジャマイカに赴任する*1


 一方、大統領再選委員会での「工作」も活発さを増していた。マイロン・ダン、ハンク・フェリス*2、ウォルター・タロック、そしてロジャー・キャッスルも加わり、モンクトンの対立候補に関する情報収集と彼らの権威を失墜させる方策が話し合われる*3。また、実業家オジマンディアスが自らのビジネスへの便宜と引き換えに100万ドルを提供し、小分けされた小切手は私立探偵バスとサラシニによって複数の銀行で目に付かぬように換金される*4。こうした現金は決済書類や帳簿への記載なしにアダム・ガーディナーが管理する金庫に搬入され、またタロック等が必要とする現金は同様に決済なしに金庫から持ち出される。こうした行為をハンクはアダムに強要し、アダムの上司ブルースター・ペリーも見て見ぬふりをしろとアダムに告げる*5。精神的に追い詰められるアダム。こうした様子に心を痛めたワンダはウィズノフスキに再選委員会の内情を暴露する。また、妻ポーラから真相を話すよう迫られたアダムも、ウィズノフスキに告白の電話をかける。*6


 そんななか、モンクトンは、カール・テスラーがもたらした中国からの招待の知らせに心を躍らせる*7。しかし、破局はすぐそこに迫っていた。カリフォルニアに飛んだハーグランドとタロックの一味は、大統領候補の一人メリマンの事務所に侵入し、警備員に気付かれてしまう*8
 ジャマイカの大使公邸裏の浜辺でくつろぐマーチン夫妻。マーチンの読む新聞には、ハーグランド一味が逮捕されたとの報せ。遠くの出来事だというリンダに、「誰かが長い導火線の先に火をつけたような気がする」と答えるマーチン。
 大使公邸に戻る2人の頭上にはためく星条旗がアップになり、物語は終わる。


修正履歴:
 2013年2月9日修正
  ・最終場面の「大使館裏の浜辺」等の「大使館」を「大使公邸」に訂正
  ・注2を追加。
  ・注3に加筆。

*1:現実:ヘルムズのCIA長官辞任は1973年2月2日。その後、1973年から1976年まで駐イラン大使。

*2:劇中、第2話でホワイトハウスを去った元報道担当(ハンクの元上司)のボブ・ベイリーが、最終回に姿を見せる。ハンク・フェリスとウォルター・タロックが「工作」の相談のためにマイロン・ダンらのもとに出向く途中、路上でボブ・ベイリーとすれ違い声をかける。ボブはロビイストとして活動しているという。ハンクはボブを懐かしむが、そんな様子を眺めていたウォルター・タロックはボブを「負け犬」と評する。

*3:現実:ゴードン・リディの工作計画を巡るミッチェル、マグルーダー、ディーンらの話し合いは1972年1月27日及び2月4日。同3月20日にはミッチェル、マグルーダー、リディにより民主党運動本部盗聴計画が話し合われている。劇中、タロックが総額100万ドルを要するプランをマイロン・ダン達に提示して却下され、後日15万ドルという「現実的な」額に抑えたプランを提示して了解を得る、というくだりがあるが、現実にもリディが誇大妄想的な提案をして却下され、現実的なプランを提示しなおすというやりとりがあったとされる。

*4:現実:ニクソンと大統領再選委員会CREEPへの違法献金では、複数の企業・個人が罰金の対象となっている。例えば、アメリカン造船の経営者ジョージ・スタインブレナー(後にNYヤンキースのオーナー)もその一人である。彼は1960年代前半には民主党に鞍替えしていたが、モーリス・スタンズらからニクソンへの献金をしつこく要求されていたという。結局彼は要求に応じ、ニクソンの個人弁護士ハーバート・カームバックの指示に従い1972年4月から10月頃、3000ドル分の小切手を33通という形でCREEPに資金を提供した。

*5:現実:モーリス・スタンズとヒュー・スローンとの間で実際に劇中のような会話がなされたことは、後にスローンが証言している。

*6:現実:ヒュー・スローンは1972年7月に辞任。ボブ・ウッドワードの情報源「ディープ・スロート」と目されたこともあった。しかし近年、当時のFBI副長官マーク・フェルトが、自身が「ディープ・スロート」であることを公表し、ウッドワードもそれを認めた。

*7:現実:ニクソン訪中は1972年2月。

*8:現実:ウォーターゲート・スキャンダルのきっかけとなった侵入事件は1972年6月17日に発生。