権力と陰謀/大統領の密室 DVD

 日記の操作の仕方も忘れかけた今日このごろ。3年以上放置していました。

 直前の(といっても2013年2月の)日記で、"Washington: Behind Closed Doors"(邦題「権力と陰謀 大統領の密室」のDVDが、と書いています。合衆国のACORNというメーカーが出した3枚組のDVDです。権利処理はきちんとなされているのでしょうか。このDVDはすぐに購入しました。日本でもAmazonで注文可能でしたが、今は中古品のみの扱いとなっているようです。
 当然のことながら日本語吹き替えも字幕もありません。しかし、英語字幕は表示できるので、これはありがたい。何度も繰り返し見直しています。
 そんな中で、購入直後から気になっている点がありました。ドラマのクライマックス、第6話のキャンプ・デービッドでのモンクトン大統領とCIA長官ビル・マーチンの対決シーンです。

 アスペン・ロッジの室内で、マーチンは自分の切り札として、ホワイトハウススタッフによる盗聴行為と大統領の関与の証拠をモンクトンとタック・タルフォードに提示します。その後、マーチンとモンクトンは屋外に出て(室内だと海軍に盗聴されているので)、薄っすらと雪の残るキャンプ・デービッドの敷地内を歩きながら、「取引」の話し合いをします。マーチン(それとサイモン・キャペルとバーニー・ティビッツの計3人)がホワイトハウスの違法行為を公にしないのと引換えに、(1) プリミラ・リポートの破棄、(2) CIAを辞めるマーチンを小国の大使にする、(3) 後任のCIA長官に生え抜きのダーウッド・ドルーを任命すること、(4) エルマー・モースに命じてFBIによるCIAへの妨害を止めさせ連絡関係を再構築すること、の4つを要求します。モンクトンは「マーチンは何を求めるつもりか? どういう態度をとるべきか? 時間稼ぎができないか?」といった態で、話を逸らしたりしながら肩を並べて歩きます。取引条件を確認した二人は、広場(片隅に故アーサー・カリー元大統領が息子のために設置させたシーソーなどの遊具があり、向こうではちょうど鹿が草を食んでいます)で立ち止まり、マーチンはモンクトンに、取引条件を呑むか否かを問います。向かい合う二人。モンクトンは一旦視線を逸らして鹿を見やり、マーチンに向き直り、唇を舐めたあとで、一言ぼそりと「呑もう(I'll take it.)」とこたえ、マーチンを残して歩み去ります。
 両者の間の緊張感がフッととける瞬間。モンクトンの怒りと敗北感の入り混じったような、何とも言えない表情が印象に残るシーンです。モンクトンが背を丸めて歩く後姿。勝利を収めたマーチンですが、その広場に独り立つ姿にも空しさのようなものが漂います。

 しかし! 何故かDVDでは、このモンクトンの「呑もう(I'll take it)」がカットされているのです。モンクトンは、マーチンに向き直ったあと、いきなり何も言わずにその場から歩き去ってしまいます。最初観た時に愕然として、自分のDVDの不良か、編集ミスか、とあれこれ考えました。最近になってAmazon.comのレビューを見たところ、同じ点を指摘している投稿が一件だけありました(イギリス在住の方のようです)。少なくとも私の手元にあるDVDだけの不良といった現象ではないようです。その投稿主は、推測として、何らかのクレームを予防するためにカットされたのではないかとしています。CIA長官が大統領を脅迫して、大統領が明示的にそれに応じる、というのは問題がありすぎるということでしょうか。でも、このドラマ全体が犯罪的な行為に満ち満ちていますから、このシーンだけ手を入れても仕方ないように思うのですが。
 この後にマーチン夫妻がジャマイカに大使として赴任する場面があるので、視聴者にはモンクトンが取引に応じたことは伝わります。しかしながら、対決シーンの頂点を削ってしまうと、あのキャンプ・デイビッドのシーン全体が何とも間の抜けたものになってしまうように思えてなりません。