フレンチカフ
「名探偵ポワロ」の衣装について書きながら*1、前からの疑問がむくむくと頭をもたげてきた。
疑問:シャツのカフスはダブルとシングルどちらがフォーマル度が高いのか?*2
どーでもいいことだけどね。フォーマルなんて結婚式以外では縁がないし。でも、例えばその結婚式で、ディレクターズ・スーツとかブラック・スーツで少し堅い方向に頑張りたい場合には、どっちにすべきなんでしょ。
先の日記でも挙げたポール・キアーズ(出石尚三訳)『英国紳士はお洒落だ』(飛鳥新社1992)35頁には
カフ・リンクスで留めてよいのは、二重に折返す正式のフレンチ・カフであることを識るべきだ。
などという記述がある。他に手元にある本だと昨夏に亡くなられた落合正勝氏の『男の服装術』(はまの出版1999)の133頁にもダブルの方がフォーマルだと書かれている。
他方で、これは記憶があやふやで、確かむかぁ〜し昔、板坂元氏の本だったと思うけど、フレンチ・カフの「フレンチ」は"lazy"といった意味合いで、本来は一重の袖を糊でパリパリに固めたものをカフ・リンクスで留めるのが正統なのだ、といった趣旨のことが書かれていたような。ネットで検索してみても、こちらのカフスボタン屋さんのブログにそうした記述があった。
「正統」なのはどっちなんだろ。又は現代の感覚でよりフォーマルなのはどっちなんだろ。ホワイトタイ、ブラックタイ(タキシード)、モーニングコートの場合には厳密なコードがあるだろうけど*3、上に書いたようにブラックスーツやディレクターズスーツの場合は?
http://en.wikipedia.org/wiki/French_cuff ではダブルとシングルの比較はなし。
ちなみに検索してたら、とあるシャツ屋さんのサイトで、ポール・キアーズの本の記述を出典明示なしで丸々半ページ分ほどパクッてるところがあった。ご用心ご用心。
*1:id:makinohashira:20070309#p2
*2:何となく、映画「薔薇の名前」で、背景の一つ「清貧論争」に関連して、教皇の使節を迎えて行われる討議の場で提示される「キリストの身に着けていた布切れはキリストの財産だったのか?」というのを思い出した。キリストの衣服はそもそも私有財産を認めるか否かにかかわる原理的な問題だから、カフスの話と並べるのはおかしいけど、何となく。
*3:そういやこないだ真昼間の結婚式・披露宴にタキシードで来てたおっさんがいたけど、あれはいいのかね? タキシードっていえばアカデミーの授賞式みてて気づいたんだけど、いわゆるヘチマ襟よりもピークドラペルの方が英国風みたいな感じで流行りなのかな?