クラカチット

山椒魚戦争」や「ロボット」で有名なカレル・チャペックの「クラカチット」*1。原爆みたいなの(原子爆薬)の製法を発見してしまった若い科学者プロコプの話。熱に浮かされたプロコプのうわ言からその秘密を知った友人トメシュは姿を消し、プロコプは彼の居場所を探し始めるが・・・
10年ほど前になるのではなかろうか。買ってすぐ読もうとして、冒頭で物語に入り込めずに挫折。それ以来部屋の隅の本の山の下の方で熟成期間を過ごしていた。今回読み始めてもとっつき難さは変わらなかった。でも歳をくって得た多少の忍耐力と柔軟性のゆえか、読み進めていくと入ることができた。幻燈の世界。最初の熱病の状態が最後まで続いているような、不思議な感覚。サスペンス、ロマンス、人間性、政治、科学者の倫理、様々な要素で混沌とした残酷な大人の童話。どこかしら宮沢賢治の世界に通じるものがあるような気がする。「気がする」だけ。
小説としての出来はどうなんだろう。何を求めるかにもよるんだろうが。読み終えてからまた考えてみよう。
ちなみに偉そうなことを書いている割には私は「山椒魚戦争」も「ロボット」も読んでいない。
反省。

*1:Karel Capek, Krakatit, 1924/田才益夫訳・楡出版1992年