クラカチット2

チャペックの「クラカチット」を読み終えた。個人的には、中盤の軟禁状態の中での王女との交流がやや冗長なのに対して、王女の元を離れてからの展開が急すぎて、バランスがよくないように思えた。でもプロコプの人間としての心の揺れ動きを追うのであれば、このバランスで良いのかもしれない。支配欲や名誉欲に踊らされることはない(或いはあってはならない)が、時間をかけて育んだ愛には正義の心も破れるかもしれない。ヒロイックではない、等身大の人間であるプロコプ。その人間としてのあり方を問うときに、そうした可能性を否定することはできない。ということなのかな。しかし王女との愛は永続的な真実の愛ではなく、プロコプの求める者は別のところにあることが、最後の老人(父なる神?!)との対話で明らかになる。「最高を求める者は人間から目を背ける。お前はそうしなかったことで、人間のために尽くすことになるだろう」・・・この言葉が物語の全ての要素の行き着いた先なのだろうか。そして「信仰と愛と希望」・・・
本屋で棚を眺めていたら青土社からチャペックの評伝が出ていた。訳者は「クラカチット」と同じ方。しかし、手元不如意のため購入しなかった。*1

*1:イヴァン・クリーマ「カレル・チャペック」田才益夫訳・青土社・2003年 カレル・チャペック