ケンペとグルダ(承前)

といっても今日はグルダは出てこない。
先に挙げたCDに収録されている最後の曲は、ドヴォルザーク交響曲第8番(作品88)である。個人的には第9番「新世界から」よりも好きな曲で、何種類かの音盤を持っている。私は変な人間で、交響曲というとどこかしらの楽章が気に入らないことが多い。何故か特にスケルツォが苦手である。例えばシューベルトの大ハ長調ブルックナーの第8番、マーラーの第6番・・・そして「新世界から」も。それ以外にも、例えばモーツァルトリンツメヌエットブラームスの第3番の終楽章等々。理由は説明がつかない。何が言いたいかというと、ドヴォルザークの第8番には苦手な楽章がない、ということなのだ。乗りのよい第1楽章、時折聞こえる鳥の声の中、静かな水面を見つめていたらメダカの群れが戯れていました、という感じの第2楽章、少しベタだけど、ブラームスほど憂鬱にならない田舎風の踊り、第3楽章、そして生き生きとしておどけていて格好いい第4楽章。一番好きな演奏は、溌剌としていて表情が豊かなイシュトヴァン・ケルテス/ロンドン交響楽団
ケンペ/ミュンヘン・フィルは、ケルテスとは違い、比較的ゆったりとしたテンポでじっくりと細部まで表現しようとする演奏だと思う。叙情的な方向に大きく傾いている。特に第2楽章は憂いに満ちて、中間部は少々怖いくらいに孤独を感じてしまったりもする。ホントかよ。何はともあれ、颯爽とした演奏だけでなく、たまにはこういうのを聴くのがたまらなく良いのだ。ただ、私にとっては常に聴き続けるという演奏ではない。