オペラ座の怪人再論

昨日に続いて「オペラ座の怪人」。もう一点、瑣末ですが気になったことがありまして。プロローグとエピローグ(と中間で一箇所)の白黒画像で老いぼれた子爵様が出てきますよね。それとプロローグにはバレエ教師のおばちゃんも。これが1919年という設定。でオペラ座の「事件」があったのが1870年代。計算してみると、1919年の子爵様は歳をとり過ぎ、おばちゃんは歳をとらなさ過ぎのような。子爵はクリスティーヌと幼馴染ですから、ほぼ同年代か少し上、1870年代には20台と考えられます。それが1919年には(長年の放蕩生活のせいか)ヨボヨボです。他方でバレエ教師のおばちゃんは1870年代にはクリスティーンと同年代の実の娘をもっていますから、当時30台後半から40台のはずです。それが1919年には背筋もピンとして子爵様よりピンピンしてます。バレエで鍛えてきたおかげでしょうか。
相方の解釈としては、1919年のバレエ教師のおばちゃんは、1870年代のおばちゃんの娘のなれの果てだと。確かにそう見れば少なくとも年齢の逆転現象は生じません。しかし、子爵様と深く秘密を共有していたのは娘じゃなくておばちゃんの方のはずです。で、公式ホームページのストーリー紹介を読むと、プロローグに出てくるのは「バレエ教師マダム・ジリー」となっています。娘も母親と同じくバレエ教師になっているとすれば説明がつかなくはないですが・・・
オペラ座の怪人」って原作がガストン・ルルーなんですよね*1。機会があったら読んでみましょう。
その他のもっともっと瑣末な点:

  • この映画のファントムって指揮者のクレメンス・クラウスに似てませんか?モミアゲとか。(←モミアゲだけかいっ!)
  • バレエ教師のおばちゃんによってファントムの出自が明かされますが、彼は地下の穴倉でどうやって食いつないできたのでしょうか?
  • オペラ座の怪人」って打とうとすると「オペラ座の灰燼」って変換されるんですが、これはこれで内容的に合ってるよね。
  • 例えば「ハンニバル*2のアリアはその「ハンニバル」の他の部分の音楽(少ししか出てきませんが)とマッチしてませんよね。様式的に。これは他の部分でもそうで、例えばファントム作「勝利のドン・ファン」のリヒャルト・シュトラウス的(?)な出だしと、その先にあるファントムとクリスティーヌのデュエットとは全く異質な音楽ですよね。それを気づかせないような運び方は巧いですが。
  • 「イル・ムート」はロココ調のコメディーで楽しそうですね。でも流石はパリ。何かあったらバレエで誤魔化しちゃえ!ってのがイイですな。
  • で、結局クリスティーヌが優柔不断なのが一番良くないんじゃないかな*3
  • スワロフスキー全面協力のシャンデリアとか見て、「スワロフスキーの双眼鏡が欲しい」と思ってしまう大馬鹿者の私。
  • ああ、舞台版オリジナルのクリスティーンってサラ・ブライトマンだったんだ。知らなかった。でロイド=ウェッバー、捨てられちゃったんだ。

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*1:「黄色い部屋の謎」は集英社文庫の「乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10」というシリーズで読みましたが、実はあまり面白かった記憶がありません。あのシリーズ、「樽」以外は読んだんですが「アクロイド」と「ナイン・テイラーズ」の他はそんなに関心しませんでした。「僧正殺人事件」(「グリーン家」も酷かったけど「僧正」も同程度)「トレント最後の事件」(そうそう、探偵なんかするのは最後にしとくべきだね、トレント君)は特にどこが名作なのか未だに理解できません。

*2:どんなオペラなんでしょう。ヴェルディの「アイーダ」の劣化コピーみたいなイメージでしょうか。

*3:そういう単純な話じゃなくて、ファントムが体現する音楽の闇の部分と現世との乖離とか、音楽的な成功と人間的な幸福との背反とか、言いたいことは解るような気がするんですよ。でも