紳士の収納
ちょっと昨日の続きのような感じでパイプスモーキングのお話を。
パイプに関してずっと疑問なのは、どうやって持ち歩くか、です。人前で喫わない私には実践的に要求される知識ではありませんが、どうも気になります。昨日の日記で引用した小説の中にもヘンリー・メリヴェール卿がパイプをポケットから取り出す場面がありましたっけ。裸のままポケットに入れてたのかな? 映画などで登場人物がパイプを持っていたり喫っていたりするシーンは目にしますが、パイプをどこかから取り出すシーンは私は見た記憶がありません。
もちろん世の中にはパイプバッグという便利な道具がありまして、私もパイプを2本入れられるものを持ってます・・・ほとんど使っていませんが。これの小さいのはテレビでみのもんたが使っているのを見たことがあります。ブリーフケースなんかに入れて歩くにはこれでよいのですが、身軽に、バッグ類を持たずにお食事なんぞに出かける場合*1には・・・まさかパイプバッグをセカンドバッグみたいに抱えて行くわけには・・・。
はてさて、昔の(両大戦間あたりの)紳士方はパイプをどのように持ち歩いていたんでしょうか?
いや、私なんぞは所詮紳士ではないわけで、見習おうってわけじゃありません。
どうだったんだろうという衒学的(というのは大げさか)興味です。
身軽に出かける場合、スーツの内ポケット*2か、アウトドア用のコートを着ている場合*3(これは身軽とは言えないか)にはコートのポケットに入れることになりそうです。スーツの内ポケットの場合、あまり大きなパイプだと不恰好になりますね。このために火皿が楕円状に平たくなったオーバル型のパイプや、ヴェストのポケットに仕舞えるように設計されたヴェストポケット型なんてのがありますが・・・あまり一般的ではないでしょう。
さて、まあ、どんなパイプかはともかく、スーツの内ポケットに仕舞うことを想定して考えましょう。この場合パイプをそのまま仕舞うのが最もシンプルです。が、これだと衝撃には弱いですし、喫い終わったあとだとポケットが汚れます。そんなことは気にしないのが紳士なのでしょうけど。汚れに関しては簡単な袋(パイプグローブ)に入れれば何とかなります。しかし衝撃に関しては駄目です。これを考えるとパイプバッグの硬めのものに行き着くんですが、これは内ポケットには入りません*4。さて、どうしましょう。衝撃を受けるような環境に身を置かないのが紳士であり*5、たとえ衝撃によって長年育てたパイプが壊れても諦めるのが紳士である*6、と考えるしかないのでしょうか?
なるべくガッチリしたパイプを選べばある程度の衝撃には耐えられるでしょう。しかしガッチリしたパイプは内ポケットの中で過度に存在を主張しそうです。これは前述のとおり美しくありません(笑)。
一つ考えられるのは、メシャム・パイプが入っているような、パイプの形をなぞったハードケースです。現在ブライヤーのパイプにはこうしたハードケースは付属しませんが、例えばピーターソンのアンティーク復刻パイプでハードケース付きのものがあったと思います。これもかなり嵩張ることにはなりますが・・・
う〜ん、どうなんだろう。
*1:食事の席では喫わないでしょうが、食事の後スモーキング・ルームで、とか。
*2:スーツのウェスト部分のポケットに物を入れるなんてもってのほか、という話を聞きますね。あのポケットは飾りだと。でも紳士はそういうルールを知りつつ敢えてそれを破るものなのかも・・・。どっちでもいいけどあそこにパイプ入れたら不恰好に膨らんじゃいますね。胸ポケットにもチーフ以外は入れないのが普通でしょう。とすると収納の用を果たすのは内ポケットのみ、と。
*3:昨日引用した「九人と死で十人だ」ではH・Mは(船の甲板上なので)レインコートを着ていて、そのポケットからパイプを取り出しています。
*4:柔らかい薄い皮の1本用のパイプポーチならいけるかもしれませんが、これはグローブと同じように衝撃には弱いでしょう。
*5:例えばね、満員電車で押しつぶされる心配をしなきゃならん紳士なんていないわけです。
*6:でも紳士ってのは使い込んだ道具を持ってるのが格好よいわけで、壊しちゃあ新しいのを持つというのは一寸考えモノです。