三人のホームズ

 ブックオフ100円コーナーシリーズ
 

レストレード警部と三人のホームズ (新潮文庫)

レストレード警部と三人のホームズ (新潮文庫)

M.J.トロー「レストレード警部と三人のホームズ」


 ホームズ正典(聖典?)では無能脇役扱いのレストレード警部が大活躍するシリーズの3作目。といっても1作目と2作目は読んでないっす。
 このシリーズでは、ホームズはヤク中の頓珍漢で、コナン・ドイルがワトソンの話をやたらと膨らませて虚構のホームズ像を作り上げている、という設定のようです。で、事件解決に才能を発揮するのはレストレード警部。この「三人のホームズ」では、シャーロック・ホームズの兄マイクロフトと弟のオマール、そしてライヘンバッハの滝で死んだはずのシャーロックの「亡霊」が、国会議員連続殺害事件と国王誘拐事件に絡んでレストレードを(そしてワトソンも)悩ませます。
 ヴィクトリア女王崩御ボーア戦争の時代を背景に、バーティーこと新国王エドワード7世、詩人のキプリング、そしてウィンストン・チャーチルといった実在の人物も登場しますが、何となくおざなりな描き方(「読者へのサービスです」ってな作者の態度が透けて見える)であまり感心できません。あ、そうそう、日英同盟締結交渉の使節団の変な忍者とか侍とか(!!)も出てきます。作者がドイルの時代の日本人に対する認識を面白おかしく使ったのか、あるいは作者自身の認識がこういうレベルなのか・・・


 まあ、そんなことはどうでもよくて、主役はレストレードです。大活躍です。婦人参政権運動家のオネエチャンと懇ろな関係になったり。国王陛下の命を救ったり。レストレードというと、「イタチ顔」という形容がぴったりな、あのグラナダTVのシリーズのレストレードをどうしても思い浮かべてしまいますね。トローのレストレード・シリーズのレストレードは一味も二味も違います。というか全く別人です。
 物語のつくり自体も雑なんですが、格好良いレストレードとか、ホームズの影に怯えるワトソンとか、そんなのを想像するだけで楽しめてしまうという本でした。