思い出はそのままに

 「火星年代記」DVDをようやく観始めた。時間がとれなかったわけじゃない。家人の一緒にネットやらテレビやらで「バベットの晩餐会」「名探偵ポワロ」「チャーリーとチョコレート工場」なんてのを観る暇はあったんだから。
 じゃあ何故一週間も置いておいたのか。
 一つには、昔から変な習性があって、新しく何かを買ってもらったりすると、すぐに開けずに枕元に暫く置いておくという、何なんだろう、そんなのが今になっても治っていないせいだ。
 もう一つには、何度も書いている、美化された思い出が崩れてしまうのが怖いというのがあると思う。一昨年だったか、BSでアニメ「キャプテン・フューチャー」をやっていたのを何回か観て、「筋も絵もこんなに粗かったかしら?」とガッカリして、続けて観るのをやめてしまった。そういうのが怖いのだ。
 ともあれ、買ったものを放置しておいたら勿体無い。意を決して(我ながら大げさだなぁ)ビニールカバーを破り、DVD1枚目を取り出して再生。


 1999年の第1次火星有人探査、2000年の第2次探査、2001年の第3次探査の結末まで。レイ・ブラッドベリの描く不思議ぃ〜な雰囲気はよく出ているし、二つの文明が接触する際に生じうる摩擦と人間のあり方という問題提起も判りやすすぎるほど明確になされている。ロック・ハドソン演じるワイルダー大佐(火星有人探査計画の現場責任者)が主人公的な位置づけなのだが、そのいかにもアメリカ人的な考え方!さすがはヨーロッパから勝手に移民してきてネイティブ・アメリカンを圧迫して国を打ち立てた人たちの子孫だけある(というのは偏見に満ちているが)。このワイルダー大佐が第3次探査に自ら参加するのだが、クルーの一人スペンサー少佐が火星文明の痕跡に魅せられて心酔した挙句に叛乱を起こし、彼の問いかけに直面してワイルダー大佐が衝撃を受けるのが第1部のラスト。


 構成が緩くて、ドラマとしては無駄な部分が多い気がする。模型を使った宇宙船描写なども時代並みか劣るくらい。名作と呼べるような映像作品でないことは確かだ。が、昔観て記憶に残っていたとおりではあったので、安心はしている。
火星年代記 メモリアル・エディション [DVD]