ケルト的?

Visit

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Loreena McKennitt, The Visit
Warner/Quinlan Road 9 26880-2(1991)

ロリーナ・マッケニット。この「ザ・ヴィジット」以外に数枚CDを持っているけど、いずれも輸入盤ということも手伝って(邦盤ほど細かい解説がないもんで)、カナダ生まれの人で、ケルト的なものを一つの拠り所として創作活動をしているということしか知らない。更に言えば、最近はどうなっているのかも全く知らない。こうして書く機会にネットを検索でもすればいいのだが、それはまた別の時に、と怠けてしまっている。10年ほど前だろうか、来日したときにコンサートに行こうと思ったが、仕事の都合でどうしても駄目だったのが悔やまれる。
このアルバムは彼女のオリジナルや、グリーンスリーブスのような民謡のアレンジや、シェークスピアの詩に曲をつけたものや、様々な曲から成り立っているが、すこぶる面白い。ケルティックに、ハープの調べにのせて幻想的な・・・というだけのものではない。霧のようにしかし明確な意志をもって聴く者を包み込む声の力。伝統的なものに則りながら単調にならないリズム。英語って言葉はこんなに美しかったんだと感動すら覚えさせるフレージングとアーティキュレーションの妙。
例えば1曲目の「All Souls Night」はケルトの万霊節を歌っているが、日本の灯篭流しからもインスピレーションを得ているという。ケルト的でありながらどこかオリエンタルなリズムと音階。でもね、決して頭でっかちの音楽じゃない。迫っては来るけど息が詰まるような音楽じゃない。かと言ってヒーリングミュージックとかいう胡散臭い枠にも入らない。人の生とこの世界の全てを受け入れるという形での癒しが得たい時に(・・・どんな時やねん!)、このアルバムを聴いて元気を取り戻している。
Killashandra Ree氏のページ中にマッケニットを扱ったコーナーがある。いくつかの曲について文化的背景なども解説してあり、非常に参考になる。

しかしまあ、これだけ書き散らしといてアレだが、「ケルト的」とは何か説明しろって言われたら一言も出てこない。へたれ。