最期の12日間その2

フェスト『ヒトラー 最期の12日間』を読み始めたら、一気に読み終えてしまいました。
事実の記述(作者によると「物語風に書かれた四つの章」)の部分はさほど新奇なものはありません。地下壕の様子や、市民の苦難、ヴェンクの「一個人の運命など、もはや何の意味もない」という言葉*1に象徴される将軍達の抗命など、これまで様々な本で紹介されてきたことが簡潔にまとめられています。
この本の価値は、フェストの考察の部分(偶数章)及び芝健介氏による解説にあります。特に後者の、歴史学の流れと1980年代後半からの歴史家論争の中でのフェストの位置づけに関する論述は、簡にして要を得ていて参考になりました*2講談社新書の中にドイツの第二次世界大戦認識を巡る議論に関する本があったと思うのですが(題名失念)、あれを思い出しました。

*1:本書78頁。ここでいう「一個人」とは、ベルリンに残る決断をしたヒトラーのこと。

*2:もっとも、いわゆる歴史修正主義なんぞには触れられていませんが・・・生き残った者によるヒトラー像の歪曲云々を語るならば、歪曲を取り除くという名目で逆の極端に走っている歴史修正主義にも触れるべきかな、と。