地下壕のヒトラー
昨日は街に出て「ヒトラー 最期の12日間」を観てきました。
http://www.hitler-movie.jp/
我々も含めて観客の年齢層は高め。一組だけ場違いな(金髪に鎖ジャラジャラにポップコーンのでっかいカップで映画の始まる直前まではしゃいでいた)若いカップルがいましたが、デートに選ぶには「?」な映画かな・・・でもまあ迷彩服の軍オタっぽいおっさん*1の場違いさに比べればマシか。
内容は、ええぇと、コメントするのが難しいんですが、作り物*2とはいえ、映像化されたのを見るとやはり重いですね。人を無意味に死に駆り立てるのは、理性ではなく一種宗教的な情熱なんでしょうか。モーンケの部下*3が脱出行に加われなくて自決するのはわからなくもありません。でも市民達を吊るしていく特別行動部隊=処刑人の情熱や、最後に醸造所近くの地下室で自決するヘーヴェルとSS士官、そして6人の子供を巻き添えにするゲッベルス夫妻、さらにはベルリンあるいはドイツ国民全体を途連れにしようとするヒトラーについては何とも言いようがありません。
戦争が終わってからも多くの人がレイプされたり自殺したりするわけですね、高官だけでなく多くの市民・兵員が。その辺についてはあまり触れられてませんでした・・・これに触れると後味が悪くなりすぎるし、最後のトラウデル・ユンゲの生前のインタビューの意味が相対的に薄れてしまうし、そもそも総統地下壕とその周辺に的を絞った映画だったし、あえてオミットしたんでしょうけど。
一つだけ些細なことですが、劇中のドクトル・シェンク(シェンク博士?)って実在の人物なんでしょうか?ラストの主要登場人物のその後の消息の中に出てくるんで実在の人なんでしょうけど。もしかしてクンツ*4のこと?
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*2:筋立ての細かいところがフェストやビーヴァーの本と違ってるのは仕方ないですね。2時間半の映画としてまとめるには脚色が必要ですし。あと市民の苦難がヒトラーユーゲントの一少年とその家族に象徴的に表される形になってて、しかもその少年が最後の最後で重要な役割を果たすというのも、物語としてはありですよね。だからこういうところに文句をつけるべきじゃないんです。それからぱっと見て、登場人物が実物と微妙に似てて微妙に似てないのが気になりますね。カイテルより恰幅のいいヨードルとか、ヘスの要素が混ざってるゲッベルスとか。あとエヴァ・ブラウンが40半ばに見えるのはちょっと。トラウデル・ユンゲは実物よりかなりキュートだし。フェーゲラインは「戦場のピアニスト」に出てた人ですね。
*3:おそらく総統親衛隊=ライプシュタンダルテ指揮官のSchedle大尉。
*4:ヘルムート・クンツ。フェスト「ヒトラー 最期の12日間」によればSS衛生局副主任(同書174頁)。ゲッベルス夫人から子供たちの殺害について相談を受け、子供たちを眠らせるためにモルヒネを注射する。なお、毒薬の投与は断り、これはゲッベルス夫人とシュトゥンプフェッガーが実行。脱出行には加わらずハーゼ教授と共に宰相府で最後まで負傷者の手当にあたる。・・・劇中のシェンク博士とはかけ離れていますね。