ライナーのマイスタージンガー第2幕

 フリッツ・ライナー指揮ウィーン国立歌劇場ヴァーグナーニュルンベルクのマイスタージンガー」・・・やはり歴史的な資料というか記録というか、それ以上の価値は見出しえないような気がしてきました。
 結構テンポの変化をつけてるんですが、歌手がそれについてきていません。呼吸が合っていない。練習の不足でしょうか。国立歌劇場の再開記念公演、全般的に準備が大変だったみたいですし。
 第2幕はまあまあ良い感じで進んでいきます。パウル・シェフラーのハンス・ザックスはオットー・ヴィーナーほどルーズな感じでなく、ハンス・ホッターほど爺臭くなく、でも一寸表情に乏しいかもしれません。声量豊かに歌い上げるという感じでもないし。当時もう盛りを過ぎていたのかな。でもまあ渋めの歌でそれはそれでよいでしょう。ゼーフリートは第1幕に続き可愛らしい声ですね。ハンス・バイラーのヴァルターは相変わらずナヨナヨした歌い方。柔らかい声を出したいんでしょうが、ナヨナヨとみっともない。第2幕ではあまり出番がないのが救いです。そこにエーリヒ・クンツのベックメッサーが出てくると、途端に舞台に光がともるようです。敵役なのにね。ベックメッサーとザックスのやりとりでは客席から笑い声も聞こえます。軽くて素直なバリトンですが、端々で皮肉っぽく意地悪そうな表情を出してくれるので、これぞベックメッサー!という感じ。
 で、ベックメッサーのハチャメチャセレナーデとザックスの靴底叩きの応酬のところは聞いていて楽しいです。そこにダーヴィドが現れて、アッチェレランドしてかなりのテンポで乱闘場面に突入!


・・・・・・トスカニーニ*1並のスピードで飛ばすオケに合唱が全くついていけません。音楽上の大混乱。パニック。カタストロフ。あ!弦が落ちた?管楽器だけが辛うじてライナーの指揮につけているようです。舞台上がどうなっているのか、想像したくもありません。最後に何とか辻褄を合わせて・・・


 こりゃ酷い。ボロボロだよ。


 そうだ、この第2幕最後が滅茶苦茶で、しかもこれから聴く第3幕全体がチグハグだったんだ。だから売っ払ったんだった。思い出してきた。

*1:1937年のザルツブルクでの実況録音。録音状態は最悪ですが、演奏は最高です。