終着の浜辺

 マーラーのお供にはJ.G.バラード「終着の浜辺」

終着の浜辺 (創元SF文庫)

終着の浜辺 (創元SF文庫)


 SFというより(いや、SFなんですけどね)人間心理を扱った短編集。バラードは大昔に萌えるもとい「燃える世界」と「沈んだ世界」を読んだだけですが、それらと共通する耐え難いまでの閉塞感にこの短編集も覆われています。長編と違うのは、結末が意図的に唐突で余韻に浸る間もなく自失状態で投げ出されてしまうこと。特に「ゲームの終わり」と「ゴダード氏最後の世界」「甦る海」でしょうか。特に「ゴダード氏」は他には無い「味」を感じたので何度か読み直してしまいました。未来の(何処とは知れない星の)墓荒らしの話である「時間の墓標」は判り易く且つ叙情的でこの短編集の中では私の一番のお気に入りかもしれません。筋立てや内容はわかりやすかったけれども逆に面白みには欠けていたのは、サブリミナル効果を扱った「識閾下の映像」と逆説の物語である「マイナス 1」でした。


 しかしまあ何というか、年末に読むような本じゃねーよな。