学寮祭の夜 その2

 学寮祭の夜 (創元推理文庫)
 年末に読み始めたセイヤーズの「学寮祭の夜」です。今回は少しずつ読み進めて今日読み終えました。
 中盤以降、犯人と動機を推測するのは難しくありません。さほど注意深く読まなくても可能でしょう。この小説の評価すべき点は、解説にもありますが、「誰が」「何故」という謎が周囲の状況にうまく溶け込むように描かれている点でしょう。比較的歴史の浅い女子学寮、女性の社会進出への評価、学問の世界の人間像等々、読んでいて興味深いことばかりです。それと、作中で探偵小説作家ハリエット・ヴェイン嬢が悩むように、セイヤーズもこの小説で登場人物特に2人の探偵役に肉づけを与えよう、心裡を描こうと工夫を凝らしています。ただ、それによってピーター・ウィムジイ卿が魅力的に見えるようになったとは私には思えませんが。まあ、結末的にはめでたしめでたしですわな。