ヒュルトゲン・ヴァルト

 二、三日前からこんな本を読んでいます。

The Battle of Hurtgen Forest (Spellmount Siegfried Line)

The Battle of Hurtgen Forest (Spellmount Siegfried Line)

 ヒュルトゲンの森。アルデンヌのすぐ北にある森林・丘陵地帯です。私がこの名前を認識したのは、確か中学生の頃だったと思います。1944年のアルデンヌにおけるドイツ軍の反攻作戦(バルジの戦い)を扱った戦史関係の何かの読み物で、アルデンヌに配置されていた米軍がヒュルトゲンの森の激戦で消耗した部隊だったといった記述に出会ったのだと記憶しています。しかし、それ以来、このヒュルトゲンの森を巡る戦闘自体について、詳しく書かれた本を読んだことはありませんでした。
 で、何かの拍子に思い出して、アマゾンで検索して買ってみたのがこの本です。
 著者のホワイティングはこの戦いとベトナム戦争との類似性を指摘しています。装甲部隊の効果的な運用を妨げる深い森林。待ち伏せブービートラップ。僅かな土地を巡る血みどろの白兵戦。そして、現場感覚から隔絶してしまった戦争指導。著者はアイゼンハワーと米軍指揮官達に厳しい非難を浴びせます。執拗過ぎるほどに。・・・著者の紹介を見てみると、やっぱり、イギリスの人ですね。
 戦史の本としては「情感過多」型の本で、この戦いの苛烈さは伝わってくるのですが、例えば数次にわたる米軍の攻勢において、どのような部隊が投入されて、それぞれ目標が何処だったのかといった、基本的な事実に関する整理は行われていないので、私のような「とりあえず全体像を知りたい」という読者にとっては読みやすい本ではありません。興味深く読み進められる本ではあるのですが。ちょうど半藤一利ノモンハンの夏』みたいな感じですね。