悲劇的

バルビローリ/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
リヒャルト・シュトラウスメタモルフォーゼン
グスタフ・マーラー 交響曲第6番イ短調
EMI 7 67817 2(輸入盤CD・1967年録音)


第1楽章冒頭、ゆったりと歩むようなテンポで始まるバルビローリのマーラー6番。これに慣れてしまうと他の演奏はセカセカしすぎているように聞こえてしまいます。バルビローリのマーラー(というかバルビローリの演奏)って今どき流行らないですよね。マーラーもいいし、シベリウスなんか絶品だと思うんですが。マーラーの場合には今どきの演奏みたいに「矛盾に満ち満ちた構造や細部を全部暴きます」って感じじゃなくて、温もりのある音楽としてまとめちゃう*1。そんなのツマランって言われれば、そうですかと答えるしかないです。あと、下手だって言われることもありますが、それはどうですかねぇ?
演奏に話を戻すと、第1楽章もよいのですが、第3楽章に置かれたアンダンテから終楽章にかけてが一番好きなところです。第3楽章にアンダンテを持ってくるのはバルビローリの演奏の一つの特徴ですが、この順番の方がしっくりきます。スケルツォの直後に終楽章という順だと聴いてて疲れますし、終楽章のインパクトが薄れますから。
最近になってTestamentからベルリン・フィルとの録音(1966年のライブの放送音源)が出てます。この演奏は以前HuntからAMラジオ並みの酷い音のCDで出ていました。今回のTestamentからリリースされたものはモノラルですが聴きやすい音です。演奏はニュー・フィルハーモニア盤と同じくゆったりとしたテンポ始まりますが、より激しく推進力を伴っているように感じます。ただ、いくつかもたつき・とまどいといった箇所があるので、完成度の点ではニュー・フィルハーモニア盤でしょうか。ベルリン・フィルとの演奏に関してはTestamentのものよりHuntの音の悪いCDの方がアラが隠れていて、遠くから激しい音楽が聞こえてくる雰囲気も独特で(笑)、好きだったりします。


ちなみにバルビローリのマーラーを知ったのも諸井誠さんの「交響曲名曲名盤100」でした。マニュアル人間の私。


注釈

*1:同時代のホーレンシュタインの演奏もよく聴きますが、そちらは勢いで細部をデフォルメしちゃうこともありという感じでしょうか。バルビローリはしっとりと弦を歌わせながら結構細かいとこまで再現して、かつ全体をバランスよくまとめ上げてると思います。