頭が錆びついてきた

タキトゥス年代記」の上巻をようやく読み終えました。体調が悪くて床に就いている時間が長いと、本を読む時間もたっぷりとれますね。頭に入っているかどうかは疑わしいんですが。
ゲルマニクスが没してテオドシウス帝の実子ドゥルススが帝位に近づいた、と思いきや、テオドシウスが取り立てた護衛隊(親衛隊)長セイヤヌスの陰謀により、このドゥルススも呆気なく毒殺される。ティベリウスはローマを離れてカプリ島の別荘で隠遁生活を送るようになり、一番の側近たるセイヤヌスの権力が日増しに高まっていく。彼とその一派の差し金により、故ゲルマニクスの妻アグリッピナと息子ネロとドゥルススは何れも非業の死をとげる。が、セイヤヌスの天下は長くは続かず、その忠誠に疑問をもったテオドシウス帝の意を受けた新護衛隊長マクロと消防隊長ラコにより、セイヤヌスは粛清される。セイヤヌスに荷担した元老院階級や騎士階級の名士は続々と排除されていく。やあてテオドシウス帝が没すると、このマクロに担がれたカリグラことガイウス・カエサルゲルマニクスの息子の一人)が帝位を継ぐ。テオドシウス帝の末期8年間とカリグラの4年間は恐怖と混乱がローマを覆っていたようです。カリグラもクーデターに倒れ、クラウディウス帝の世となるが、妻メッサリナが政治に介入し、更なる混乱が巻き起こる。というとことで、クラウディウスとネロに関しては下巻に続くことになります。
残念なのは、セイヤヌスの没落からセイヤヌス派の排除の途中まで、及びカリグラに関する部分の原点が欠損しており、この部分は訳者の付記により補われていることです。何れも非常に興味深い部分なだけに、(訳者も書いているように)タキトゥス自身の記述に触れたかったですね。でも仕方がありません。誰かその辺の記述で不利益を受ける人が捨てちゃったのかもしれませんね。いや、どうなんでしょう。調べずにイイカゲンなことを書いちゃいけないんですが。グナエウス・ピソ(ゲルマニクスの死の原因になったとされる人物)の裁判の部分は残ってるのに・・・
しかし、他にも非常に面白い部分が失われずに残っています。法に関する考察、奢侈に流れる世の中の風潮について、そして占星術などの占いへの厳しい評価などです。法の部分なんかシニカルですね。ローマって法律社会だったわけで、タキトゥスも所謂「十二表法」を高く評価してるんですが、社会が複雑になるにつれて法律もどんどん複雑になり、作られるそばから忘れられていく現状を、皮肉な目で見つめています。グラックス兄弟の改革なんて、タキトゥスにとってはテロルだったんですね。まあ実際に内乱状態の引金になってるわけですし。占いの部分もそうですが、現代に通じるところがたくさんあります。