「編集者を殺せ」

昨日買ったレックス・スタウトの「編集者を殺せ」、昨晩と今日の往復と空き時間で読んでしまいました。う〜1000円以上するのに、読むのが早すぎるよ〜
さて、ウルフとアーチーの掛け合いは相変わらずだし、女性の描き方も巧いし、法曹業界への風刺にも満ちていて、なかなかに面白かったですね。いろんな意味での騙しあいの妙を味わうこともできます。ただ、謎とその解決は比較的単純です。しかも、その解決自体が証拠に支えられているのかどうか・・・。ある人物が犯人じゃないってことは論理の問題として明らかだし納得がいくんですが、ある人物が犯人であることの根拠は薄弱です。所謂状況証拠しかないような。少なくともアリバイに関しては最後の最後まで読者には手がかりが提示されませんし。スタウトのミステリーにそもそも存在しているある種の傾向*1が、この本では顕著なんじゃないでしょうか。私は「ノックスの十戒」の信奉者ってわけじゃないんで、スタウト流も大好きなんですけどね。
それにしても、この邦題は何なんでしょうね。ワケがわかりません。訳文も(原文と照合しながら読んだわけじゃありませんが)日本語として疑問符がつく箇所がたくさんありましたし。ベテランの訳者さんみたいだけど、なんだかなぁ。

*1:刑事コロンボが紛い物の証拠で犯人を引っ掛けて自白させるようなのと同じ感じでしょうか。というか「誰が」「どうやって」の部分よりも、ウルフとアーチーがどのように犯人を追い詰めるのかが興味を惹くという限りでコロンボのような倒叙モノに近いという感じでしょうか。