バイロイトの第九・・・未知なる領域へ

 20051103記載:
 以前ジュリーニシューベルトハ長調交響曲に関する記述にコメントいただいたfurt-orooroさんはブログ「フルトヴェングラー鑑賞記」というサイトをお持ちで、膨大な情報を蓄えて公開なさっています。折をみて読ませていただいているのですが、フルトヴェングラーをはじめとする古の名指揮者についてはいろいろな形で復刻がなされているのですね。その多くを購入されて聴き比べるエネルギーに脱帽!です。
 私のフルトヴェングラー経験(もちろん実演ではなく録音ですが)は貧弱です。CD棚にあるのは次のものだけ

  1. ベートーヴェンの第5番(1947年のDG盤)
  2. 同第9番(バイロイト
  3. シューベルトの大ハ長調D.944(1951年のDG盤)
  4. 同「未完成」D.759(1952年のDG盤)
  5. ブラームスの第3番(1954年で4のカップリング)

シューマンの第4番もあったはずなのですが見当たりません。あとは中学生の頃に近くの公立図書館で音楽カセットを貸し出していて、フルトヴェングラーの確かエロイカ(違うかもしれません)と、カップリングで「ニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲(どの録音か不明)が入ったテープを頻繁に借りて聴いていた記憶があります。マイスタージンガーの小気味良いテンポ(しかも自然に変化するのが何とも言えません)による流れるような演奏にはまってしまいまして。どうも「フルトヴェングラーは超絶的な指揮者で彼にはまると危ない」という感じで意図的に遠ざかっていたような気がします。


 さて、「フルトヴェングラー鑑賞記」でまず心惹かれたのは上述2のバイロイトの第九。1951年の演奏。私が持ってるのは1984年発売のEMIのReferenceシリーズ(CDH 7 69801 2)*1。私は録音状態に関してはまあこんなもんかと思って聴いていました。で、furt-orooroさんのところを拝読すると、もっと音の良いのが出てるらしいじゃありませんか。しかも星印がついてるOTAKENのTKC301って、先週の月曜に仕事の移動途中に寄ったタワーで手にとったあのCDじゃないっすか!ミントのLPからの盤おこしだそうで、そのときは「こんなのも出てるんだ」って買わなかったんですが、興味がムラムラモリモリわいてきました。
 今日も先週と同じ移動経路だったので、時間をつくってタワーに寄って・・・いや念のためタワーの近くの別のCD屋さんに寄ったらそっちの方が80円ほど安かったのでそっちで買ってきました。


 移動途中にすぐ聴けるようにCDウォークマンD-EJ2000とSHUREのE3cを持っていきましたので、早速拝聴。確かに古いCDだとゴーストのような嫌な残響がまとわりついて音像がぼやけていたのですが、だいぶマシになっています。声部間の分離も良好です。流石に合唱の部分はゴチャッと固まってしまいますが。第4楽章ではソロの声が瑞々しく聞こえますね。天上桟敷(バイロイトにはそんなもの存在しませんが)からオーケストラの響きを遠くに聞いていたのが、平土間の状態の良い席に移れたような感じです。
 もちろん元の録音が1951年ですし、ライブですし、EMIですし*2、アナログからの盤おこしですし、限界があるのも確かです。第1楽章の最初の方でいきなりワウってますしね。


 LPの盤おこしというのを明確に謳っているCDを聴くのは初めてで、未知なる領域への第一歩だったのですが、これは色んな意味で私のようなヘナチョコが足を踏み入れてはならない領域のようです。
 まず、相当の時間と知力と財力をつぎ込まないと満足が得られません。私にも昔は「この曲のCD全部集めるぞ!」とか「この指揮者のCD全部集めるぞ!」と意気込んでいた時期がありました。が、放送音源やらが次から次へと出てくる状況、特に所謂「青裏」盤の登場などにその意気込みも挫かれ、今やコレクションとしては中途半端だけど音楽を聴くには過剰なCDの山が残るのみ。夏草や、ってな心境です。こんな人間が蔵だミトスだオタケンだという深い深い世界に踏み入ったら、迷子になるか自己破産か、でしょう。
 次に、私のCD購入資源の配分に関する現下の原則(2005年9月制定)は、

  1. これまで聴いたことのない曲にチャレンジする
  2. 古い演奏だけでなく新しい演奏にも耳をかたむける
  3. 聴いたことのある曲を古い演奏で買う場合にはジュリーニ、バルビローリ、コンドラシンベームを優先する(四者での優先順位はこの順番)

ということになっています。今回OTAKENのバイロイトの第九を買う際には、1に該当するオネゲル交響曲集や3に該当するベームブルックナー交響曲第7番(Altus)を諦めていますので、原則に違背したことになるのです。だったら3にフルトヴェングラーを入れればよいことなのですが、上述のとおり、彼には麻薬的な危険を感じるのでやはり簡単には買えません。
 最後に、装置の問題です。レコード会社所蔵のマスターからのCDとLPやSPからの盤おこしのCDとの違いを有意に聞き分けるには、一定以上の装置が必要なようです。CDウォークマンSHUREのイヤホンは有用ですし、ArcamのCDPとSTAXのイアスピーカー*3だとはっきりと違いが判ります。しかし、うちのメインの(大したことのない)オーディオ装置では古いCDもそれなりに鳴ってくれて、それなりの満足を得られてしまうのです*4。より純度の高い再生が可能な装置であれば、ソフトに凝るのもアリなのですが・・・


 CD屋さんのその種のコーナーを眺めていると、未知なる領域の奥深くまで踏み入ってみたい衝動には駆られます。でも、少なくとも今の私には、無理なようです。

*1:furt-orooroさんのとこの記載の番号とは少し違いますね。

*2:EMIの録音はそんなに貧弱だとは思わないのですが、同時期の他レーベルに比べると聞き劣りがするのも確かです。それよりも何よりも、貴重な原盤をどんな状態で管理してるんでしょうか、EMIさんっ!(怒)

*3:静電型ヘッドホンで、専用のヘッドホンアンプが必要。

*4:スピーカーの配置がイイカゲンなのとスタンドが貧弱なのが大きいと思われます。