大いなる聴衆 その3

 一昨日読み終えました。
 「誰が」の部分についてはほぼ予想どおりでした。動機についても第4章のはじめの方でわかってしまいますし。ミステリとしては物足りなかったですね。解説にあるように共感できないキャラクター設定は敢えてだとしても、その設定自体がステロタイプで平板であり、かつ言動の描写に工夫がないので、手がかり(赤い鰊)を物語の中にうまく溶け込ませることができていない。そんな感想を持ちました。
 演奏家(あるいはもう少し広げて創造者)、教師、マネジメント、興行主、出資者、そして聴衆。どれもが「どっかで読んだ話」の域を出なくて、どれもが中途半端。


 こういう読み方は厳しすぎますかね?
 まあその、読み手としての私自身、この小説の中での「聴衆」の位置づけなわけで、そういう人間が小説を評価するなんておこがましいことなわけですが。


 何はともあれ、上に書いたような感じなので、逆に読みやすくはあります。予想したとおりに物語が展開する安心感というか。「早く先を読みたい」という高揚感なしに二日で読み終えてしまいましたから、それはそれで相当なものじゃないでしょうか。
 ああ、我ながら嫌味な書き方だなぁ。


 最後に一つだけ。鍵盤を叩いて音が鳴ったか鳴らないかは、耳だけじゃなくて叩いた指の感触だけでもわかるんじゃなかろうか?