バラバを!

 ラーゲルクヴィストの「バラバ」を読み終えました。薄い本なのですが、結構時間がかかってしまいました。訳者等による解説まで読んでしまったので、その受け売りっぽくなっちゃいますが、バラバという現代人的な視線を備えた人間(しかもキリストの代わりに赦免された人間!)を、磔刑・復活・弾圧といった場に立ち会わせることで、信仰・救いの意味を問う作品ということになるでしょう。バラバは、懐疑の心を持つという意味だけでなく、魂と肉体の安住の場を持たないという意味でも、現代人の象徴と言えます。キリストや使徒達に接触しながらも、「盲目的に愛する」ことができなかったバラバ。石打ちの刑に処せられた女の死体を抱えて葬りに行くバラバ。鉱山奴隷仲間のキリスト者サハクを裏切るバラバ。何故かローマの街に放火してまわり、ペテロ達の逮捕と処刑のきっかけを作ってしまうバラバ。こうしたバラバに何故か共感を抱かざるをえませんでした。