ジーヴス

 近頃の通勤のお供は、P. G. Wodehouseの「Carry on, Jeeves」
 

Carry On, Jeeves

Carry On, Jeeves

貴族のボンボンで金持ちぐうたら主人のバーティーに雇われた執事ジーヴスが、バーティーやその友人達の直面する困難を鮮やかに(?)解決してゆくというシリーズの短編集。「困難」というのが誠に身勝手で常識ハズレで馬鹿げていて、叔父さんのスネをかじって暮らしてきたのが、お金を貰えなくなりそうだよ、どうしよう、といったもの。ジーヴスの考える解決というは、共感できるものからニンともカンともなものまで様々。
 例えばこの短編集の第4話「Jeeves and the Hard Boiled Egg」なんてこんな調子。ニューヨーク(バーティージーヴスも訳あってニューヨークにいます)で遊び暮らしている友人ビッキーの叔父チズウィック公爵が、ニューヨークまで様子を見にやってくる。マトモに働いていないのがバレたら公爵からの仕送りを止められてしまう。どうしよう。ジーヴスの発案で、まずは体裁をつくろうためにバーティーの高級アパートをビッキーの住居だということにするが、公爵は「こんなところに住めるくらい収入があるなら仕送りは要らんだろ」とのたまう。困ったビッキーは、これまたジーヴスの発案で、公爵自身を商売「公爵様と握手できます:1回○○ドル」のネタに使うことに。でもこれが公爵にバレてしまい、最後にはこの商売に公爵が(知らずに)手を貸していたことを新聞にバラすと脅して(!)職と収入を手に入れる始末。詐欺と強迫の二重奏ですやん!(いや、詐欺とは言えないかもしれんけど)
 ここまで滅茶苦茶なのばかりじゃなくて、しみじみした話や共感できる話なんかもあります。ジーヴスのもったいぶった言葉遣いや、バーティーが「執事には支配されまい」と思いながらもジーヴスに従わざるをえない様子なども、結構面白いですね。普通のペーパーバックで1話20頁強。馴染みのない言い回しも多数出てきますが、辞書までは使わなくてもだいたいの意味はわかりますので、往復の電車の中で丁度1話読み終える見当です。


 国書刊行会から翻訳「それゆけ、ジーヴス」が出ているようです。
それゆけ、ジーヴス (ウッドハウス・コレクション)
でもやっぱり電車で読むならペーパーバックですわ。安いし(笑)