茶道の哲学

 

茶道の哲学 (講談社学術文庫)

茶道の哲学 (講談社学術文庫)

 あまりの衝撃に、日本人としてのアイデンティテイーを取り戻すべく手にしたのが久松真一「茶道の哲学」です。実践なしに本だけ読もうというのは駄目駄目ですが、読まないよりマシでしょう。
 茶道の奥にある精神・禅の精神から説いて、形式のみに終わってしまっている茶道の現状を批判し、「道」としての意味を問い直すという内容ですので、改良論の一種なのでしょう。「道」には必然的にドグマが存在します。茶道の場合は要求される所作自体がドグマであるとも言えるかもしれません。しかし本来的な精神との結びつきを失った所作(形式)は、空虚なドグマでしかありえません。それではやはりおかしい。紹鴎・利休の精神に立ち返らなければならない、と。
 この本自体を更に批判的な目でみれば、利休万能主義みたいな思考形式はどうなんでしょうね、という気がします。どうなんでしょうね。