005ハイドン第100番

 諸井誠『交響曲名曲名盤100』を手がかりに交響曲を聴こう。第94番「驚愕」、第100番「軍隊」、第101番「時計」と、第2楽章に特徴がある交響曲が並びます。「軍隊」では、大太鼓とシンバル(それにトライアングル)という、当時オーケストラではあまり用いられなかった軍楽隊用の楽器が用いられることと、第2楽章の集結部近くでトランペット・ソロの進軍ラッパみたいなファンファーレが鳴り響いて、直後に全パートのトゥッティでズーンと強奏が響き渡ること、この二点が特徴になります。しかし、第2楽章は2分の2拍子のアレグレット、異国風の、の〜んびりした「軍隊」ですね。全体の雰囲気もほんわかして長閑。国境警備の兵隊さんが平和な野原で昼寝中、といったところ。
 これは私がクリストファー・ホグウッド指揮アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックの演奏で聴いているからかもしれません。ホグウッドの演奏は、ピリオド楽器によりながら、刺々しさがなく穏やかだという印象があります。ハイドン交響曲に関しては、ある程度進んでいた全集の制作が頓挫してしまったそうで、非常に残念。


 『名曲名盤100』では、「どんな演奏で聴いても楽しい」として演奏に関するコメントは無しで、推薦版はオットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア。残念ながら聴いていないのですが、繊細かつぶっきらぼうでどこか人をくった風情のクレンペラーは、この曲にはピッタリなんだろうなぁ。クレンペラーのCD、輸入盤も国内盤も一時期大量に出てて、「何時でも買えるだろ」とか「Okazakiリマスターの悪夢」とかいってパスしてたら、いつの間にか消えてしまってました。EMIにはもう少し頑張ってほしいなぁ。
 他に挙げられているのは、ヨッフムロンドン・フィル、マリナー/アカデミー室内O、ワルター/コロンビアO、コリン・デイヴィス/コンセルトヘボウ、スイトナー/、バーンスタインニューヨーク・フィル、ビーチャム/ロイヤル・フィル。


 手持ちのCDは、上で触れたホグウッドを含めて3点。第94番とほぼ同じです。

  1. ビーチャム/ロイヤル・フィル(EMI・1958-1959年録音):第99番〜第104番の2枚組
  2. ヨッフムロンドン・フィル(DG・1973年録音):5枚組のロンドン交響曲群+α
  3. ホグウッド/エンシェント室内管(オワゾリール・1983年録音):第94番・第104番とカップリング
  4. ブリュッヘン/18世紀O(Philips・1990年録音):13枚組のセット

 サー・トーマス・ビーチャムは「典雅」のひとこと。慌てず騒がず、でも表情は豊か。古き良き時代、でしょうか。ヨッフムの録音は木管がころころと転がるような音色で涼やか(第94番で書いた「木製の小さな立方体を転がす」という感じではなく、ここでは「ころころ」という語感のとおり)。ブリュッヘンピリオド楽器のオーケストラですが、ヨッフムよりもずっしり重く鳴らしどころでは派手。
[20080514及び20080517:追加・訂正]