権力と陰謀 あらすじ(2)

権力と陰謀 大統領の密室
第2回「機密漏洩」
NHK総合 1978(昭和53)年7月9日(日)20時50分〜22時20分


 ビル・マーチンは、モンクトン政権で安全保障担当の大統領補佐官に任じられることとなった(不偏不党を自任する)カール・テスラー博士を通じ、モンクトンに接近してCIA長官留任を取り付けようとする。モンクトンはCIAの活動に不満を漏らし、またマーチンが「カリー一派」であることに嫌悪を示すが、テスラーのアドバイスに従いマーチンを留任させる。


 就任式の日、アンダーソンは大統領執務室を訪れたモンクトンを冷たくあしらい忠告を与える。モンクトンは屈辱を感じるが、大統領の椅子を手に入れたことに深い満足を感じる。*1
 テレビ放送を通じて就任演説を聴く報道関係者に対して、ボブ・ベイリーは、モンクトンの潜在的な能力が発揮されるのを見極めるため、しばしの蜜月期間を置くことを求める。


 モンクトンの大統領就任に伴い、選挙戦で功績のあったスタッフはホワイトハウス入りを果たす。フラハティは首席補佐官となり、若手スタッフの人事を取り仕切る。ハンク・フェリスは広報責任者となったボブ・ベイリー*2の補佐に任じられるが、フラハティから、モンクトンとフラハティに忠誠を誓い、ベイリーの行動をフラハティに報告するよう言い含められる*3。アダム・ガーディナーはTVプロデューサーのポーラと結婚し、ホワイトハウスではベイリーの下で働くことになる*4。ロジャー・キャッスルは法律顧問として迎えられ*5、ロジャーの恋人ジェニー・ジェイミソンはロジャーの伝手で連邦証券取引委員会(SEC)に就職する。ジェニーはワシントンでの暮らしに馴染めず孤独を感じるが、ロジャーはそれに気付かない。


 東南アジアでの戦争の終結を公約に掲げて大統領となったモンクトンだったが、その陰では戦争は一層泥沼化し、秘密裏に中立国への越境爆撃が行われるまでに至っていた*6。これがマスコミにリークされ*7、モンクトンは「国家の利益のためにやっていることを理解していない」「もしカリーやアンダーソンなら批判されなかっただろう」と激怒する。モンクトンはテスラーと軍首脳を招いて協議し、戦線の崩壊を阻止し有利な条件での停戦を実現するために戦争の部分的拡大を方針として決定する。
 その一方で、タルフォードらに情報漏洩の阻止と敵対勢力の追及を命ずる。モンクトンの意を受けたタルフォードと内政担当大統領補佐官アリソンは、私立探偵ハーヴェイ・バスとバート・サラシニを雇い*8、越境爆撃をスクープしたテレビ記者ピーター・ケリーをはじめとするモンクトンの政敵や批判的な報道関係者の身辺調査を命ずる。フラハティは「ワシントン・プレス」の記者ジョー・ウィズノフスキに目を付け、アリソンとタルフォードに彼も身辺調査の対象に含めるよう指示する。更に、モンクトン、タルフォードは敵対者に対する盗聴の実施についてロジャーに検討を命ずる*9


 マーチンの愛人サリー・ウォレンはワシントン市内のブティック*10で偶然リンダと出会い言葉を交わし、マーチンを愛していると告げる。


 スタッフへの統制を強めようとするフラハティは、他のスタッフに自分の指示に従って行動するよう命令し、大統領との面会や提出書類は全て自分と自分の補佐官のジミー・バードを通すことにする。その結果、モンクトンの長年の個人秘書ドロシー・ケンプは大統領執務室から遠ざけられる*11。また、ボブ・ベイリーは「開かれた政権」を掲げて報道関係者との良好な関係の構築に腐心していたが、マスコミ嫌いのモンクトン自身から疎まれ、フラハティと対立して、辞職せざるをえなくなる*12。ハンクはベイリーとフラハティの間で板挟みとなるが、ベイリーの後任として広報責任者にとりたてられ、改めてフラハティに忠誠を誓う。
 ハンクとその妻キャシーは、自分たちが大統領に目をかけられていることに満足を感じる。しかし、アダムの妻ポーラは、ベイリーを排除しフラハティらを重用して閉鎖的なホワイトハウスを作り上げるモンクトンのやり方を批判する。ベイリーの辞職にドロシーは孤立感を深める。


20210202:注11の内容加筆。他微修正。

*1:現実:ニクソンの大統領就任は1969年1月20日

*2:現実:ハーバート・クラインは、(少なくとも名目上は)ホワイトハウスと他の行政官庁を含む政権全体のスポークスマン「Director of Communications for the Executive Branch」であり、ジェブ・マグルーダーがその補佐にあたった。ロナルド・ジーグラー(広告会社におけるハルデマンの部下だった)がこれとは別に大統領報道官に就任した。

*3:現実:ジェブ・マグルーダーは、選挙後ボブ・フィンチから保健教育福祉省のポストを提示されるが、これを断り、1969年8月にハルデマンと面談の上でホワイトハウス入りしている。

*4:現実:ヒュー・スローンは1969年1月にホワイトハウス入りし、1971年3月までドワイト・チャピンの下で大統領のメール整理やスケジュール管理を手伝う。1971年に結婚する妻はニクソンの運動員。

*5:現実:ジョン・ディーンの大統領法律顧問就任は1970年7月。前任の法律顧問はアーリックマン。

*6:現実:1969年3月カンボジア秘密爆撃。その後も「名誉ある平和」のために戦争は拡大し、1970年4月カンボジア侵攻、1971年2月ラオス侵攻、1972年5月北爆再開。

*7:現実:ニューヨーク・タイムズによるカンボジア秘密爆撃暴露記事は1969年5月9日。

*8:現実:ウラセヴィッツは元ニューヨーク市警の警官で、ジョン・コールフィールドからの紹介で1969年3月頃からホワイトハウスのために働き始めた。ラロッコが加わるのは1971年12月から。コールフィールドも元ニューヨーク市警で、1968年にニクソンのボディーガードとして働き始め、ニクソン当選後にアーリックマンの配下となる。

*9:現実:実際には公的機関による諜報活動のプランを立案するのはジョン・ディーンと同じ弁護士でありディーンのライバルのトム・ヒューストン。第3話参照。

*10:劇中、ブティックはウォーターゲート・ビル内にある。劇中では、ウォーターゲート事件をモデルとしたメリマン事務所侵入事件の舞台はカリフォルニアであり、ウォーターゲート・ビルが出てくるのはこのブティックのシーンのみ。

*11:現実:ニクソンの個人秘書ローズ・メアリー・ウッズは最後までニクソンに忠実だったが、ハルデマンやアーリックマンとは確執があったとされる。のちにウォーターゲート事件の捜査・調査に関係して、大統領執務室の会話を録音したテープに不自然な消去のあとが発見されたとき、ウッズは、テープから会話内容をおこす際に自分が操作ミスで誤って消去したとして、ニクソン等を庇った。操作ミスの状況を再現するウッズの写真が公開されたが、非常に不自然な姿勢で電話に手を伸ばしながらテープレコーダーのフットスイッチに足を乗せる彼女の写真は、かえって「誰かが都合の悪い部分を意図的に消去した」という疑念を増幅させることになった。

*12:現実:ハーバート・クラインの辞職は1973年7月1日。