002ハイドン第83番

 諸井誠『交響曲名曲名盤100』を手がかりに交響曲を聴こう、企画第2回の今回はハイドン交響曲第83番。『名曲名盤100』では、いわゆるパリ交響曲群(第82番〜第87番?)からはこの1曲が選ばれています。第82番の「熊」なんかも良い曲なのですが、100曲という制約があるから仕方ありません。
 『名曲名盤100』で挙げられている演奏は、コレギウム・アウレウム合奏団のものを筆頭に、ドラティ、フォン・カラヤンベルリン・フィルバレンボイム/イギリス室内O、ザンデルリンク/ベルリン交響楽団というもの。コレギウム・アウレウムのものは「復元的演奏」を試みたものとして推奨されていますね。手持ちのリストは次のとおり。

  1. バルビローリ/ハレO(EMI=Dutton・1949年録音):第88番「V字」及び第96番「奇蹟」とカップリング
  2. ブリュッヘン/18世紀O(Philips・1996年録音):13枚組のセット

・・・2枚だけでした。『名曲名盤100』とはかすりもしていません。クルト・ザンデルリンクのパリ交響曲のセットは最近再発されたCDがお店に並んでいるので、買ってみようかなと思いつつ、手がのびません。一寸苦手な曲かな、というのもあるんですが、サー・ジョンとハレ管の演奏で満足してしまっていまして。
 このCD、モノラルで木管なんか弦に埋もれ気味だし、合奏の精度も完璧じゃないし、しかも第一楽章で少なくとも1カ所オリジナル・テープの傷が修復できなくて音符一つ分欠落して前のめりになってる箇所があるし、と決して他の方にお薦めできる演奏ではありません。でも、例えばその第一楽章の厳めしく始まる第一主題とユーモラスな第二主題との対比、2つの主題が融合する展開部でのバランス感覚、第二楽章や第三楽章での弦の歌わせ方などなど、聴いていて安心するし感心もするという、なかなかの演奏だと思うのです。
 83番のニックネームは「雌鶏 La poule」で、第一楽章の第二主題が鶏の鳴き声に似ているから*1とか、鶏が歩くときに頭を前後に振る様子を思わせるからとか、まあそんなことのようです。聴く限りでは後者の方が妥当なような。サー・ジョンはここを優しくそしてキッチリと演奏していまして、それがこの箇所の面白さを増しています。
 さて、最初の方で、「一寸苦手」と書きました。それは第四楽章のことなのです。G-dur、8分の12拍子、ヴィヴァーチェの、田舎のお祭りの舞踏なんかを思わせるような*2軽快で爽快な音楽です。非常に楽しい。でも、全体の締めくくりとしては軽すぎるような気もします。何かこう、聴いていると、この第四楽章がスケルツォ的な(あるいは拍子は違うけどメヌエット的な)楽章に思えてきて、この後にもう一楽章あるのではないかなどと考えてしまう。そんな終わり方なのです。こんな風に聞こえるというのは、そもそも私の耳がロマン派的なものに毒されてしまっているからなのでしょうけど。
 ちなみに、サー・ジョンとハレ管はこの第四楽章でVnとVcの縦の線が崩れ気味になる箇所があって、そこが非常に残念。といって、ブリュッヘンだと第四楽章が更に軽い印象になって、ニンともカンとも。やっぱり他の演奏も聴いて(他のCDも買って)みようかな。

Symphonies 83 88 & 96

Symphonies 83 88 & 96

  • アーティスト: Joseph Haydn,John Barbirolli,Hallé Orchestra
  • 出版社/メーカー: Dutton Labs UK
  • 発売日: 2005/08/09
  • メディア: CD
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 ↑私の持ってるのは1995年発売のものでジャケットが違ってます。リマスタリングしなおされているんでしょうか?

*1:諸井誠『交響曲名曲名盤100』では、こちらの説明。

*2:バルビローリ盤(1995年発売のDutton CDSIB 1003)のマイケル・ケネディによるライナーノートでは、「狩猟場にいるような」と表現されています。