ゴダード凄い
ゴダードの作品は・・・
- "Past Caring" (1986) 「千尋の闇」(創元推理・1996)*
- "In Pale Battalions" (1988) 「リオノーラの肖像」(文春・1993)*
- "Painting the Darkness" (1989) 「闇に浮かぶ絵」(文春・1998)
- "Into the Blue" (1990) 「蒼穹のかなたへ」(文春・1997)*
- "Take No Farewell" (1991) 「さよならは言わないで」(扶桑社ミステリー・1994)
- "Hand In Glove" (1992) 「鉄の絆」(創元推理・1999)*
- "Closed Circle" (1993) 「閉じられた輪」(講談社・1999)
- "Borrowed Time" (1995) 「永遠に去りぬ」(創元推理・2001)
- "Out Of the Sun" (1996) 「日輪の果て」(文春・1999)*
- "Beyond Recall" (1997) 「惜別の賦」(創元推理・1999)
- "Caught In the Light" (1998) 「一瞬の光の中で」(扶桑社ミステリー・2002)
- "Set In Stone" (1999) 「石に刻まれた時間」(創元推理・2003)
- "Sea Change" (2000) 「今ふたたびの海」(講談社・2002)
- "Dying to Tell" (2001) 「秘められた伝言」(講談社・2003)
- "Days Without Number" (2003) 「悠久の窓」(講談社・2005)
- "Play To the End" (2004) 「最後の喝采」(講談社・2006)
- "Sight Unseen" (2005) 「眩惑されて」(講談社・2007)
- "Never Go Back" (2006) 「還らざる日々」(講談社・2008)(*)
- "Name To a Face" (2007) 「遠き面影」(講談社・2009)
- "Found Wanting" (2008)
- "Long Time Coming" (2010 forthcoming)
うち、「蒼穹のかなたへ」は賞をとってて、さらにジョン・ソウ主演でTVドラマ化されているようです。
*が既読のもの。極一部じゃないですか。
凄いですね。ほぼ毎年1冊出してて、しかも確実に翻訳されてきている。古本屋の100円コーナーばかり見てちゃ駄目なんですね。しかも最近は講談社文庫か。全然チェックしていませんでした。
ハリー・バーネット三部作
また3ヶ月も放置。何だか余裕がないなぁ。風邪で寝込んでいるときしか、落ち着いて文章を書いて更新という気分になりません。
さて、娯楽本の読書記録、ロバート・ゴダード編。出版順とかあまり考えずに、ブックオフの100円コーナーで見つけた順に読みました。
- 鉄の絆(上)(下)
- リオノーラの肖像
- 蒼穹のかなたへ(上)(下)
- 日輪の果て(上)(下)
これらの内、「蒼穹のかなたへ」と「日輪の果て」は、8月に書いた「Never Go Back」(id:makinohashira:20090829#p1)と同じハリー・バーネット氏が主人公の1作目と2作目。お人好しの駄目男ハリーの来歴を辿ることができました。悪友バリー・チップチェイスとの関係も含めて。
ハリーことハロルド・モーズリー・バーネット*1は1935年5月22日生まれ*2。15歳でスウィンドン市議会の事務局に就職し、1953年から55年の兵役(空軍)を挟んで15年間勤務*3。その後、1965年頃、空軍時代の同僚バリー・チップチェイスとバーンチェイス・モーターズを興すが、1972年に破産*4。1979年から、同じダイサートがロードス島に所有する別荘の管理人として拾われる*5。
「蒼穹のかなたへ」は1988年11月〜1989年1月*6の出来事で、ハリー53歳、舞台はギリシア(主にロードス島)、イギリス、スイス。ハリーはロードスで過ごすこと9年。そこに訪ねてきた若い女性ヘザー・マレンダーが山中で失踪し、ハリーは容疑者となります。ヘザーはかつてハリーがクビになったマレンダー・マリーンの当時の経営者の娘(現経営者の妹)であるということで、ハリーへの容疑は濃くなってしまい、ハリーは自らに降りかかった疑いの火の粉を払うため、偶然手に入れた失踪女性の撮った未現像フォルムを手がかりに、事件の捜査に乗り出します。この失踪事件に、1年半前の失踪女性の姉の爆死事件や、30年以上前のオックスフォードでの事故も絡んできて・・・
「日論の果て」は「蒼穹」の6年後で、舞台はイギリスとアメリカ。ハリーはロードスに帰るわけにもいかず、ロンドン郊外のガソリンスタンドのアルバイトで糊口をしのぐ身の上。そのアルバイト先に、ハリーの息子が死に瀕しているという電話がかかり、身に覚えのないハリーが病院に出かけていくと、天才数学者ディヴィッド・ヴェニングが昏睡状態で横たわっています。大昔、市議会職員時代の上司の妻との情事を思い出すハリー。息子の存在と現状に驚愕したハリーは、息子が加わっていたアメリカの未来予想会社のあるプロジェクトのメンバーが次々と不可解な死を遂げていることを知り、疑惑の解明に踏み込んでいきます。ハリーは疑惑を解明し、脳神経外科の専門家の助けを得て息子の命を救う(安楽死を阻止する)ことができるのでしょうか。ここで、「蒼穹」で触れられていた、ハリーがロードスの居酒屋で起こしたデンマーク娘との「騒ぎ」*7が、微妙に関係してくるのが面白いですね。
「Never Go Back」*8は2005年頃の出来事。ハリーは幸せに結婚して妻子とカナダで暮らしています。郷里スウィンドンで母親が死に、葬儀と後片付けにやってきたハリーに、空軍時代の同窓会の誘いが・・・というのは既に8月の日記に書いています。
それにしてもハリー氏、「Never Go Back」でもそうでしたが、特に1作目の「蒼穹のかなたへ」を読むと、そのお人好しっぷりに涙が出ます。読者には誰が怪しいか最初から丸わかりなのに、ハリーだけが何もわかっていない。もっとも、真の動機とか、ハリーの人生とも絡む謎とか、様々な伏線がはってあるので、読者としては最後まで飽きることはありません。
「日輪の果て」の真犯人と動機は、正直意表をつかれました。しかし説明が余りに茫洋としていて説得力には欠けるなと思いましたが(←上から目線で何か言わないと気が済まない悪い癖です)。表面的なプロットとの関係では、生き残りの中に裏切り者がいるはずだが誰かという要素(結局生き残りの中にはいないかもしれないんだけどね)が強調されないと、緊迫感にも欠けるような気がしますし。ただ、ハリーという人物像の変化、あるいは周囲のハリーへの評価の変化と、さらに「Never Go Back」まで繋がるその後の人生へのターニングポイントが描かれる点で、これはこれで三部作の中で読めば面白い作品でしょう。
ハリーはお人好しの駄目男だけど、だからこそ女性には信頼されるし、結構もてるんです。「蒼穹」のヘザー、それにハリーを信頼して独自捜査を精神的に支えるヘザーの母、「日輪」のドナ、ハリーのかつての不倫の相手。これは中年男のある種の理想像なんでしょうなあ。
細かい点。「蒼穹」文庫(上)165頁以下、ハリーとアランが昼食をとりにいくのは「ゴダード・アームズ」・・・著者の遊びでしょうね。
*1:「蒼穹」文庫(上)25〜26頁によれば、「モズリー」はイギリスのファシスト、モズリー卿からとられたもの。「ハロルド」はバイロンの「チャイルド・ハロルドの巡礼」からとったのかな?
*2:文庫(上)26頁。また文庫(上)153〜154頁及び(下)372頁よれば、1947年3月には11歳、ということで符合。
*3:文庫(上)109頁。
*4:文庫(上)106頁。)。かつてバーンチェイス・モーターズにアルバイトに来ていてその頃は海軍将校になっていたアラン・ダイサートの口利きで1973年から船舶用エレクトロニクスの会社マレンダー・マリーンに勤務。1978年に経理上の不正行為の濡れ衣をきせられ解雇((文庫(上)52頁、111頁等。
*5:文庫「上」111頁。
*6:「蒼穹」文庫(上)23頁。また、文庫(下)372頁によれば事件が週末を迎える1989年1月は、1947年3月の「42年後」。
*7:ハリーが好色な人物でありヘザーを手にかけたのではないかという疑いを深める一因になっていました。
*8:お!「Never Go Back」の翻訳は講談社文庫から「還らざる日々」で出てるんですね。しかも2008年。絶対翻訳で読んだ方が楽だったわ。
GyaOジョッキー
GyaOの夜の生放送が8月28日で終わってしまいました。Yahoo!と一緒になるそうですので、その関係なのでしょう。復活はないか。
昼の生放送が終わって、溜池NOWも終わって、調子良くはないんだとうなとは思っていましたが、竹山さんの番組とか結構お金かけてるような感じなので、正直こうなるとは思っていませんでした。
鳥居みゆきやら髭男爵やらオードリーやら、ここで知ったタレントさんは結構いますし、失礼ながらユリオカ超特Qさんやら山本しろうさんやら、テレビ観てるだけじゃ認識できなかった人も数多くいるので、終わってしまったのは残念です。岡田斗司夫氏の番組も(氏の意見に賛同できるかどうかは別として)興味が持てたのでした。イベントとか続けるらしいけど、それに行くまでの興味はないわなぁ。
選択
ハイエク主義的なものを含んだ新保守主義が負けたの?
よくわからない・・・
前の衆議院議員選挙では、郵政民営化が前面に出て、しかもその郵政民営化が(少なくとも竹中さんと彼を登用した小泉さんが意図したであろう)ハイエク主義的なものの選択だということが選挙民に十分に理解されていなかったような気がする。
今回の選挙では、多くの人の言うように、民主が勝ったというより自民が負けたのだけど、そこでも負けた理念が何だったのか結局のところよくわからない。
麻生首相は、辞任表明会見で自民党が保守政党であることに間違いはなく、保守であり続けなければならない、というニュアンスのことを言ったらしい。これは間違いでも何でもないけれども、日本人にとって「保守」とは何なのか、それを考え直した方がよいような気もする。そうしないと、自民も民主も訳のわからん集団のままなんじゃないかな。
そもそも保守とリベラルなんて二極で(教科書的に)語ること自体がナンセンスなのかもしれないけど・・・
よくわからない・・・
直感としては、少なくとも40代以降にとっての保守って、共同体主義的な保守、社会民主主義に近い保守、少し違うかもしれないけど経済政策に限れば宮沢喜一・加藤紘一的な(この2人を一つに括る時点で間違ってるね)保守のような気もする。
さてさて・・・
ポピュリズムとか衆愚とか言うけど、4年前の選挙もそうだったかもしれんわけで、それを棚にあげて今回の選挙にだけそうした批判を当てはめようとするのは無理があるような。
本当に よくわからない・・・
銀河ヒッチハイクガイド
- 作者: ダグラス・アダムス,安原和見
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/09/03
- メディア: 文庫
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ダグラス・アダムスの「銀河ヒッチハイクガイド」は1970年代終わりの作品なのですね。ブックオフの100円コーナーでたまたま手にとって、面白そうなので買って読んでみました。
ハーンの末裔の木っ端役人・・・銀河帝国大統領が宇宙船強奪・・・不可能性ドライブ・・・墜落死するマッコウクジラ・・・よくわからない・・・
そもそも、わかろうとしちゃいけないのかな。でも、原文を読むともっと隠れた意味がありどうな気がするし。でも、これ、原文はとても理解できないだろうし。
何となく笑える、で終わってよい本なんだろうか。続編があるので読んでみたいところ。
ゴダードのNever Go Back
しばらく止まってしまっていた、Robert Goddard, "NEVER GO BACK" をようやく読み終えたので、メモ。
- 作者: Robert Goddard
- 出版社/メーカー: Corgi
- 発売日: 2006/11/14
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主人公のハリー・バーネットは同じゴダードの"INTO THE BLUE"(邦訳「蒼穹のかなたへ」)*1と"OUT OF THE SUN"(同「日輪の果て」)の駄目駄目中年主人公であったらしく、この"NEVER GO BACK"では70代のご老人。この作品でも格好良い主人公とはとても言えません。じっと辛抱してりゃいいものを(無論それでは小説が成り立たないわけですが・・・)、ウロウロ動きまわって事件をややこしくしてるだけのような気がするし。アクション的なクライマックスで事件に一つのケリをつけるのは、一緒にいた女性だし。その後の物語的なクライマックスでは・・・う〜ん、どうなんでしょう。ハリー氏、お人好しなんですよね。幸せに余生をおくってほしいものです。
このハリー、1950年代には英国空軍(RAF)の駄目駄目隊員で、相棒のチップチェイス氏に誘われて酒保用物品横流しに手をそめるも発覚し、1955年に懲罰代わりに「クリーンシート作戦(Operation Clean Sheet/Operation Tabula Rasa/白紙作戦)」*2なる実験に送り込まれます。この作戦、アバディーン大学のマッキンタイア教授の主導で、それぞれに好ましくない前歴をもつ15人のRAF駄目隊員達(ハリーの他にもちろんチップチェイス氏も含む)をスコットランドはアバディーン近郊の城に閉じこめて、駄目人間に対してでも適切な環境の下で適切な方法による高等教育をほどこせば成果があがるという理論を確かめようという奇妙なもの。実験自体は目的を達したのかどうかわからない内に終わり、その後ハリーはチップチェイス氏に振り回されたりしながら駄目駄目な社会生活を送るものの、何やかやで幸せに結婚して一児の父としてカナダ在住。故郷で母親が亡くなり、葬儀や後始末のためにイギリスに戻ったところに、偶々「クリーンシート作戦」の50周年同窓会が開かれるということでアバディーンまで出かけていきます。しかし、同窓会の参加者達が不可解な死をとげ、様々な状況からハリーとチップチェイス氏に嫌疑が。二人がこれを晴らすべくあれこれ調べまわると、「クリーンシート作戦」の裏には別の目的が隠されていたこと、この作戦がヘブリディーズ(ヘブリデス)諸島のある島(東の果てアバディーンとは遠く離れたスコットランドの西の果て)での事件と繋がること、同窓会以前に亡くなっていた作戦参加者のうちの少なくとも一人の死はこの事件とつながりを持つこと等が明らかになっていきます。
連続殺人の真犯人は読んでいれば直感的に判ってしまいますが、「クリーンシート作戦」の真実に関係する真犯人の動機は最後の方になるまで判らず、それがこの物語の肝なのでしょう。作戦の真実というのが中々見えてこなくてストーリーが停滞しかねないところを、お人好しのハリーと「人たらし」のチップチェイス氏の喜劇風味の言動が、丁度よいテンポで話を動かしてくれます。お二人はデジタル・ディバイドな世代ということで、重要そうなフロッピーを手に入れても扱いに困ったり、チップチェイス氏の元妻に助けてもらって読もうとしたけどパスワードが判らずファイルを開けなかったり、そうこうするうちに家に放火されて肝心のフロッピーが焼かれてしまったり・・・泣けてきます。
もちろん、謎の美女も花を添えます。1955年当時のマック教授の実験助手で今は出世しているスターキー博士というのがいて、その弟子であるエリカ・ローソンなる女性も同窓会に参加しており、これが敵か味方かわからない怪しい別嬪さん。ロバート・ゴダードの作品を読むのは未だこれで2作目ですが、こういう美女の存在というのがゴダードの「型」なんでしょうか。あるいは中年男性の夢。ただ、本作ではストーリーへの絡み方が中途半端で残念。
他にも、いかにもスコットランド的(?)な風景描写や、タリスカーを飲ませれば何でも喋るという酔っぱらいのオッサン*3も良いですね。ハイランドを旅したくなること必定*4。
謎解きの面白さやコメディー的な要素だけではなく、冷戦という時代背景とか、作戦参加者達の50年の人生とか、味わう部分も多くある面白い作品でした。「クリーンシート」という作戦名も、ああ、二重三重の意味をもってたんだ、とか。"NEVER GO BACK"という題はこういう意図なのかな、とか。同窓会の主催者であるデンジャーフィールド氏が何故死ななければならなかったのか*5等、納得のいかない点もありますが、まあ、それはそれとして・・・
*1:ジョン・ソウ主演で1997年にテレビドラマ化されているらしい。
*2:"Tabula Rasa"(タブラ・ラサ)は「無垢なる石版」を意味するラテン語。無垢な心とか、再出発とか、そんな意味にもなります。
*3:タリスカーの蒸留所があるスカイ島はインナー・ヘブリディーズ諸島に属し、物語最後の方の舞台となるアウター・ヘブリディーズ諸島よりも本土寄りに位置しています。他にもオーバンとかマル島とか、モルト・ウィスキー好きにはなじみ深い地名が出てきます。
*4:アバディーンシャーはハイランド東部。アクション的なクライマックスはアウター・ヘブリディーズ諸島の南の方の島々。物語的なクライマックスはグラスゴーで、グラスゴーはハイランドではなくローランド。なお、ハリー氏の故郷スウィンドンはイングランド南西部ウィルトシャー。
*5:もちろん物語の中で説明はなされていますが、それならハリーとチップチェイス氏の方が(例え秘密保持の約束をしたとしても)余程死ななければならないはずです。