権力と陰謀 あらすじ(3)
権力と陰謀 大統領の密室
第3回「盗聴指令」
NHK総合 1978(昭和53)年7月16日(日)20時50分〜22時20分
モンクトンは、反戦運動に対して融和的な姿勢を示すために、リンカーン記念堂でピケを張る反戦学生のもとにアダム・ガーディナーを送り込む。アダムの報告を聴いたモンクトンは、自ら学生達を訪れるが、対話に失敗し野次の中を退散する羽目になりアダムを詰る*1。しかし、アダムは生真面目さを評価され新たに立ち上げられる大統領再選委員会*2の金庫番に任命される。
モンクトンとタルフォードの意を受けたロジャーは、CIA長官マーチン、FBI長官エルマー・モース、そして内国安全保障局長官をホワイトハウスに呼び出し、危険分子への盗聴の実施の方針を伝える*3。これにはさしものエルマー・モースも「合衆国憲法を読んだことがあるのか?」とたじろぐ*4。マーチンは政権の行く末に危惧を抱き、前大統領アンダーソンの農場を訪れてワシントンの現状を報告する。
そんな中、国家安全保障会議の機密文書(戦術核兵器使用の理論的研究)漏洩が発生*5、カール・テスラーは憤慨し、モンクトンに対策をとるように求める。アリソンとタルフォードは、私立探偵バスとサラシニに政府職員とウィズノフスキらマスコミ関係者との接触の有無を見張らせる一方で、更に元CIAのラース・ハーグランド、元軍諜報部員のウォルター・タロックを雇い、情報漏洩阻止のための違法工作に手を染めていく*6。
また、タルフォードは「カリー一派」を追い落とすための情報を求めて、FBIやCIAに関係書類の提出を要求する*7。CIAへの要求の中にはプリミラ・リポートが含まれていたが、マーチンと補佐官キャペルは当たり障りのない書類だけを渡すことでサボタージュしようとする。しかし、タルフォードはハーグランドと共に提出書類を検討し、マーチンのサボタージュの意図を見抜く。
大統領再選委員会では、実業家ベネット・ローマンがブルースター・ペリーを訪れ、献金及び自分の所有のホテルでモンクトン支持集会を無料で開くことと引き換えに、自分の妻を大使にするという取引を持ちかける*8。ペリーとマイロン・ダンはこれを承認する。
モンクトン自身も、私邸を安全確保の名目をもって公費で改修することを指示したり*9、政策関係の相談に訪れた商務長官を無碍に追い返したりする*10など、独善と腐敗の度を強める。
ジェニーは自分の都合を押しつけるロジャー・キャッスルと喧嘩し、SECでの上司イーライ・マッギンに慰められる。しかしロジャーと別れることができない。
アダムは妻ポーラの知人ウィズノフスキと食事を共にするが、ウィズノフスキを監視していたサラシニがこれをタルフォードに通報、翌朝アダムはフラハティにウィズノフスキに何を喋ったのかと詰問される。フラハティは更に、ポーラの担当する政治討論番組が左寄りだと非難し、教育番組として連邦が与えている予算補助を打ち切ろうとする*11。
マーチンとサリーの関係は本格化し、弁護士も同席して妻リンダとの離婚の話し合いが行われる。マーチンは、リンダが望む物は全て渡すと告げて席を立ってしまう。
ある朝、サリーのもとをかつての愛人ジャック・アサートン上院議員が訪ねる。アサートンの所属する外交委員会がベネット・ローマンの妻アン=マリー・ローマンの大使任命を審査することなったが、アサートンはモンクトンによる売官を疑っている。そこで、アサートンはサリーにベネット・ローマン関係の何らかの不正の証拠をマーチンから入手するよう依頼する。サリーの頼みを受けてマーチンはサイモン・キャペルをバハマに派遣、ベネット・ローマンに関係するマネーロンダリングや不明朗な資金移動の証拠を発見する。そこにはモンクトンの名も現れていた。
サリー宅でローマン関係の証拠を渡すマーチンのもとに、前大統領アンダーソン死去の報が入る*12。マーチンは大統領専用機に同乗してアンダーソンの葬儀に向かう。機中、マーチンはカール・テスラーとともにモンクトンと面会する。ギリシャでの政変について話そうとする二人を制したモンクトンは、大統領用の机と椅子がせり上がる仕組み(アンダーソンが作らせたという)を披露し、二人を見下ろしながら高笑いする*13。
*1:現実:ニクソンの反戦学生との対話は1970年5月9日。4月30日のカンボジア侵攻テレビ演説(第4話参照)、5月8日の大規模反戦デモ(第5話参照)の後。
*2:劇中では「PRC=Presidential Re-Election Committee」という名称。現実には「Committee to the Re-Election of the President」で略称「CRP」又は「CREEP」。
*3:現実:1970年6月5日、ニクソンはFBI、CIA、NSA=内国安全保障局、国防総省情報局のそれぞれの長を招集し、(ジョン・ディーンではなく)トム・ヒューストンのプランに従って諜報機関の活動を一元化する検討会議の発足を命じた(議長はフーバーFBI長官)。この検討会議では、合衆国への敵対勢力に対する盗聴、信書開封、家宅侵入捜査等の活動の可能性と実施態勢も検討項目とされていた。いわゆる「ヒューストン計画」である。
*4:現実:ヒューストン計画の盗聴等の違法活動については特にFBI長官J・エドガー・フーバーが激しく抵抗したため、ニクソンの意向は実現されなかった。こうしていわゆるヒューストン計画は潰え、トム・ヒューストンはホワイトハウスを去ることとなる。しかし、FBIは他方で、ニクソンとミッチェルが政府内部の情報漏洩源を突き止めるための政府職員やジャーナリストに対する盗聴を要請したときには、これに従っている。こうした活動を巡っては、自らが築き上げたFBIのイメージを守るためにニクソンを距離を置き始め消極的なフーバーと、積極的な副長官ウィリアム・サリバンとの確執もあったようである。
*5:現実:ペンタゴン・ペーパーズのニューヨーク・タイムズへの掲載は1971年6月13日から。
*6:現実:ハワード・ハント等の「鉛管工」「配管工」と呼ばれるグループの活動開始は1971年7月頃から。
*7:現実:1971年7月22日のコルソンからアーリックマンへの報告によれば、コルソンの下でハワード・ハントは、ケネディ元大統領を南ベトナム大統領ゴ・ジン・ジェム暗殺に結び付ける資料を集めていた。この資料を含むハントの文書は、ウォーターゲート事件後の1972年6月20日にジョン・ディーンによりホワイトハウスのハントの金庫から発見され、6月28日になってFBI長官代行パトリック・グレイに渡され、グレイは後にこれを破棄した。資料の詳しい内容は不明。また、ハントやコルソンによる資料の入手源も不明。
*8:現実:ニクソンは大使の地位に対して10万ドル程度の献金を要求していたという。具体的に、妻を大使につけるという点では、このエピソードはルース・ファーカスの駐ルクセンブルク大使(1973-1976)任命を下敷きにしている。彼女の夫ジョージ・ファーカスはニューヨークの百貨店アレクサンダーズの創設者で、ニクソンの再選活動に30万ドルの献金をしたとされる。上院外交委員会でフルブライト上院議員は彼女の任命に反対した。彼女の死亡記事:http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9F06E1D91730F931A15753C1A960958260
*9:現実:ニクソンを巡る様々なスキャンダルの一つに、私邸(カリフォルニア州サンクレメンテとフロリダ州キービスケーン)の改修への公費投入が挙げられる。
*10:現実:内務長官ウォルター・ヒッケルは1971年11月に解任されているが、政策面での対立と同時に、ハルデマンやアーリックマンに阻まれて閣僚が大統領と面会することもままならない状況を批判したことも一因とされる。
*11:現実:ホワイトハウスは、放送事業免許の更新拒否などをちらつかせて反ニクソン的な番組について放送局に圧力をかけていた。
*12:現実:リンドン・ジョンソンの死去は1973年1月22日。
*13:原作小説では、この飛行機の場面は、モンクトン対ギリーの大統領選挙中にエスカー・アンダーソンがギリーのための遊説に飛び回る機中で、アンダーソンによって演じられる。
権力と陰謀 あらすじ(2)
権力と陰謀 大統領の密室
第2回「機密漏洩」
NHK総合 1978(昭和53)年7月9日(日)20時50分〜22時20分
ビル・マーチンは、モンクトン政権で安全保障担当の大統領補佐官に任じられることとなった(不偏不党を自任する)カール・テスラー博士を通じ、モンクトンに接近してCIA長官留任を取り付けようとする。モンクトンはCIAの活動に不満を漏らし、またマーチンが「カリー一派」であることに嫌悪を示すが、テスラーのアドバイスに従いマーチンを留任させる。
就任式の日、アンダーソンは大統領執務室を訪れたモンクトンを冷たくあしらい忠告を与える。モンクトンは屈辱を感じるが、大統領の椅子を手に入れたことに深い満足を感じる。*1
テレビ放送を通じて就任演説を聴く報道関係者に対して、ボブ・ベイリーは、モンクトンの潜在的な能力が発揮されるのを見極めるため、しばしの蜜月期間を置くことを求める。
モンクトンの大統領就任に伴い、選挙戦で功績のあったスタッフはホワイトハウス入りを果たす。フラハティは首席補佐官となり、若手スタッフの人事を取り仕切る。ハンク・フェリスは広報責任者となったボブ・ベイリー*2の補佐に任じられるが、フラハティから、モンクトンとフラハティに忠誠を誓い、ベイリーの行動をフラハティに報告するよう言い含められる*3。アダム・ガーディナーはTVプロデューサーのポーラと結婚し、ホワイトハウスではベイリーの下で働くことになる*4。ロジャー・キャッスルは法律顧問として迎えられ*5、ロジャーの恋人ジェニー・ジェイミソンはロジャーの伝手で連邦証券取引委員会(SEC)に就職する。ジェニーはワシントンでの暮らしに馴染めず孤独を感じるが、ロジャーはそれに気付かない。
東南アジアでの戦争の終結を公約に掲げて大統領となったモンクトンだったが、その陰では戦争は一層泥沼化し、秘密裏に中立国への越境爆撃が行われるまでに至っていた*6。これがマスコミにリークされ*7、モンクトンは「国家の利益のためにやっていることを理解していない」「もしカリーやアンダーソンなら批判されなかっただろう」と激怒する。モンクトンはテスラーと軍首脳を招いて協議し、戦線の崩壊を阻止し有利な条件での停戦を実現するために戦争の部分的拡大を方針として決定する。
その一方で、タルフォードらに情報漏洩の阻止と敵対勢力の追及を命ずる。モンクトンの意を受けたタルフォードと内政担当大統領補佐官アリソンは、私立探偵ハーヴェイ・バスとバート・サラシニを雇い*8、越境爆撃をスクープしたテレビ記者ピーター・ケリーをはじめとするモンクトンの政敵や批判的な報道関係者の身辺調査を命ずる。フラハティは「ワシントン・プレス」の記者ジョー・ウィズノフスキに目を付け、アリソンとタルフォードに彼も身辺調査の対象に含めるよう指示する。更に、モンクトン、タルフォードは敵対者に対する盗聴の実施についてロジャーに検討を命ずる*9。
マーチンの愛人サリー・ウォレンはワシントン市内のブティック*10で偶然リンダと出会い言葉を交わし、マーチンを愛していると告げる。
スタッフへの統制を強めようとするフラハティは、他のスタッフに自分の指示に従って行動するよう命令し、大統領との面会や提出書類は全て自分と自分の補佐官のジミー・バードを通すことにする。その結果、モンクトンの長年の個人秘書ドロシー・ケンプは大統領執務室から遠ざけられる*11。また、ボブ・ベイリーは「開かれた政権」を掲げて報道関係者との良好な関係の構築に腐心していたが、マスコミ嫌いのモンクトン自身から疎まれ、フラハティと対立して、辞職せざるをえなくなる*12。ハンクはベイリーとフラハティの間で板挟みとなるが、ベイリーの後任として広報責任者にとりたてられ、改めてフラハティに忠誠を誓う。
ハンクとその妻キャシーは、自分たちが大統領に目をかけられていることに満足を感じる。しかし、アダムの妻ポーラは、ベイリーを排除しフラハティらを重用して閉鎖的なホワイトハウスを作り上げるモンクトンのやり方を批判する。ベイリーの辞職にドロシーは孤立感を深める。
20210202:注11の内容加筆。他微修正。
*2:現実:ハーバート・クラインは、(少なくとも名目上は)ホワイトハウスと他の行政官庁を含む政権全体のスポークスマン「Director of Communications for the Executive Branch」であり、ジェブ・マグルーダーがその補佐にあたった。ロナルド・ジーグラー(広告会社におけるハルデマンの部下だった)がこれとは別に大統領報道官に就任した。
*3:現実:ジェブ・マグルーダーは、選挙後ボブ・フィンチから保健教育福祉省のポストを提示されるが、これを断り、1969年8月にハルデマンと面談の上でホワイトハウス入りしている。
*4:現実:ヒュー・スローンは1969年1月にホワイトハウス入りし、1971年3月までドワイト・チャピンの下で大統領のメール整理やスケジュール管理を手伝う。1971年に結婚する妻はニクソンの運動員。
*5:現実:ジョン・ディーンの大統領法律顧問就任は1970年7月。前任の法律顧問はアーリックマン。
*6:現実:1969年3月カンボジア秘密爆撃。その後も「名誉ある平和」のために戦争は拡大し、1970年4月カンボジア侵攻、1971年2月ラオス侵攻、1972年5月北爆再開。
*7:現実:ニューヨーク・タイムズによるカンボジア秘密爆撃暴露記事は1969年5月9日。
*8:現実:ウラセヴィッツは元ニューヨーク市警の警官で、ジョン・コールフィールドからの紹介で1969年3月頃からホワイトハウスのために働き始めた。ラロッコが加わるのは1971年12月から。コールフィールドも元ニューヨーク市警で、1968年にニクソンのボディーガードとして働き始め、ニクソン当選後にアーリックマンの配下となる。
*9:現実:実際には公的機関による諜報活動のプランを立案するのはジョン・ディーンと同じ弁護士でありディーンのライバルのトム・ヒューストン。第3話参照。
*10:劇中、ブティックはウォーターゲート・ビル内にある。劇中では、ウォーターゲート事件をモデルとしたメリマン事務所侵入事件の舞台はカリフォルニアであり、ウォーターゲート・ビルが出てくるのはこのブティックのシーンのみ。
*11:現実:ニクソンの個人秘書ローズ・メアリー・ウッズは最後までニクソンに忠実だったが、ハルデマンやアーリックマンとは確執があったとされる。のちにウォーターゲート事件の捜査・調査に関係して、大統領執務室の会話を録音したテープに不自然な消去のあとが発見されたとき、ウッズは、テープから会話内容をおこす際に自分が操作ミスで誤って消去したとして、ニクソン等を庇った。操作ミスの状況を再現するウッズの写真が公開されたが、非常に不自然な姿勢で電話に手を伸ばしながらテープレコーダーのフットスイッチに足を乗せる彼女の写真は、かえって「誰かが都合の悪い部分を意図的に消去した」という疑念を増幅させることになった。
*12:現実:ハーバート・クラインの辞職は1973年7月1日。
権力と陰謀 あらすじ(1)
今となっては資料が少ないので、備忘録としてあらすじを掲載。
「権力と陰謀〜大統領の密室」
第1回「栄光の椅子」
NHK総合 1978(昭和53)年7月2日(日)20時50分〜22時30分
東南アジア*1での戦争の泥沼化を背景に、合衆国大統領エスカー・アンダーソンは健康状態を理由に大統領選に出馬せず引退することをテレビで国民に告げる*2。CIA本部で補佐官サイモン・キャペル、職員バーニー・ティベッツと会議中だった長官ビル・マーチンは、このニュースに驚愕し、有力な後継者等に関する情報収集を命ずる。アンダーソンやその先代の故ウィリアム・アーサー・カリーにとりたてられたマーチンは*3、アンダーソンが大統領を辞めれば後ろ盾を失うおそれがある。何よりも気がかりなのは、CIAの極秘文書保管庫に保管され大統領以外は(CIA長官といえども)持ちだすことのできない「プリミュラ・リポート PRIMURA REPORT」の存在だった。プリミラ・リポートは、故カリー大統領の指示の下でマーチンが外国要人の暗殺にかかわっていたことを示す文書であり、その公開はマーチンの破滅と、CIA全体の権威の失墜、そして死後も国民の人気が高いカリーの名声の転落にもつながる*4。
アンダーソンは、ホワイトハウスにマーチンを呼出し、大統領選で苦戦する現副大統領エドワード・ギリーの陣営に対して、選挙戦を有利に進める助けになる情報、具体的には対立候補フォービルやモンクトンの対外接触に関する情報などをCIAから提供するよう要求する。これを渋るマーチンに、アンダーソンは、対立候補、中でも故カリー大統領やカリーに代表される東部出身のエスタブリッシュメント、リベラル派を忌み嫌うディック・モンクトンのような手合いが当選したら、マーチンをお払い箱にしてプリミラ・リポートを公開することになるだろうと脅しをかける。
マーチンやCIAスタッフの読みでは、副大統領ギリーは魅力に乏しい人物で当選は難しい。とすれば、マーチンとしてはアンダーソンに義理立てすると同時に、対立候補達にも接近しておく必要がある。反対政党の有力候補はフォービル上院議員とモンクトン上院議員。
モンクトンに対しては、マーチンとキャペルが直接選挙本部のあるホテル出向き、たまたま同宿したと装って国外情勢のブリーフィングを申し出て歓心を買おうとするが、古参の渉外担当選挙スタッフであるボブ・ベイリーに会うだけで門前払いを食ってしまう。モンクトンは当選の暁にはマーチンをお払い箱にするつもりであり、CIAからのブリーフィングなど当選後で十分だと言い放つ。マーチンがモンクトンとの接点を作れない一方で、CIAとの縄張り争いに熱心なFBI長官エルマー・モースは、ギリーの情報をモンクトンに提供するなどして自分の強大な権力を誇示し、かつ有用さをアピールする*5。
モンクトンの選挙スタッフの幹部は比較的新しく陣営に加わったフランク・フラハティ、ローレンス・アリソン、そしてタック・タルフォードで、中でもフラハティは常にモンクトンに付き従い重要な決定に関与し身の回りの世話まで行う側近中の側近となっている*6。20年来の古参ボブ・ベイリー*7は、オープンで親しみやすい人柄からマスコミ対応の渉外担当となっているが、フラハティらによって中枢からは遠ざけられ、実質は門番程度の役にされつつある。
彼らの下で様々な若手スタッフが働いている。ハンク・フェリスはフラハティやベイリーの下働きをする正規スタッフで、失敗をしてはフラハティに睨まれている*8。ハンクの友人アダム・ガーディナーは、モンクトンの(表面上の)主張に共感する実直なボランティア・スタッフであり、巨額の献金を申し出た実業家オジマンディアス*9を選挙戦の責任者マイロン・ダン*10に引きあわせる*11。また、野心的なエリート弁護士ロジャー・キャッスルは党大会後に自らフラハティに協力を申し出、所属する法律事務所に保管されていた対立候補ギリーの資料をフラハティに提供する*12。
モンクトン陣営の巧みな宣伝戦術などにより、予備選はモンクトンの有利に展開してゆく。
アンダーソンの不出馬・引退はマーチンと妻リンダの関係にも影を落とす。リンダは元々アンダーソンのスタッフで、アンダーソンの愛人であった。アンダーソン引退の報に落ち込むリンダ。夫婦仲は冷え込みつつあった。
マーチンはリンダと共に出席した上院外交委員会の大物ジャック・アサートン*13のパーティーで、アサートンの友人サリー・ウォレンに声をかける。マーチンは彼女を「餌」として、フォービル陣営のブレーンでカリフォルニアの研究機関に勤める政治学・外交問題の権威カール・テスラー博士*14を自らが主催するパーティーに誘い出し接近することに成功する。そして、サリーを伝書鳩としてテスラーに必要な情報を提供することを約束し、テスラーというパイプを確保する。
こうした過程でマーチンはサリーとの親密さを増していく。リンダはそれに気づき、またマーチンがアンダーソン=ギリーと距離を置こうとする態度を察知し、夫婦の間の溝は深まっていく。
党大会ではモンクトンがフォービルを破り大統領候補となる*15。本選でも有利な戦いを進めるモンクトン。アンダーソンはギリー陣営の勢力挽回のために、プリミラ・リポートをちらつかせながらマーチンにモンクトン情報の提供を迫る。マーチンはそれを渡すことは連邦法規違反となると抵抗するが、簡単なレポートを提出する。
アンダーソンは更に、自らの引退後も自分の情報入手に便宜を図るようマーチンに言い含める。
激しい選挙戦の結果、モンクトンが新大統領に当選する*16。マーチンはサリーの自宅でプリミラ・リポートの内容と、モンクトン当選の帰結について説明する。
モンクトンは勝利演説で「国民の団結」「開かれた政府」「全ての市民のための大統領府」といった美辞麗句を並べるが、その裏では「カリー一派」の徹底的な排除を目論み、閉鎖的な政権運営に向かっていく。
修正履歴:
2011年1月18日:掲載。
2011年1月22日:注を修正・追加。日本での放送日・時間を追加。
*1:劇中では国名は挙げられず「Wetland」と称されている。
*2:現実:リンドン・ジョンソンの不出馬宣言は1968年3月31日。ジョンソンはケネディ暗殺により1963年11月に大統領に就任し、ケネディの本来の残り任期1年強を大統領として務めた上で、1964年の選挙で当選している。合衆国憲法修正第22条(1947年議会通過・1951年発効)は三選を禁止しているが、ジョンソンのような形で任期中に大統領職を引き継いだ場合、その残り任期が2年以内であれば、その後2回の立候補は妨げられない。したがって、ジョンソンは1968年の選挙に立候補する資格を有していた。
*3:現実:リチャード・ヘルムズのCIA長官就任は1966年6月30日。
*4:原作小説では、プリミラ・リポート(プライムラ報告書)はキューバのピッグス湾事件をモデルとした「リオ・デ・ムエルテ作戦」に関する報告書である。この中で、カリーはソ連指導部と取引をして上陸作戦を故意に失敗させる決意をして、CIAの現場責任者であるマーチンに、上陸部隊の精神的支柱である神父を殺害することを命じ、マーチンはこれを受けて部下に殺害を実行させた、ということになっている。現実のニクソンとヘルムズの関係の中で、ピッグス湾事件はヘルムズへの脅しとして使われる。すなわち、ウォーターゲート事件の発覚後、ニクソンはCIAにFBIの捜査を妨害させようとし、ハルデマンに、ヘルムズが協力を渋るようなら「このままいくとピッグス湾事件が蒸し返される」と言うように指示し、ハルデマンがヘルムズにこれを伝えると、ヘルムズは「ピッグス湾は何も関係ない!」と大いに動揺したという。なお、ハルデマンはこの文脈での「ピッグス湾」が暗にケネディ暗殺を指すのではないかと推測している。このピッグス湾事件を持ち出してCIAを通じてFBIの捜査を止めさせるという会話(1972年7月23日の録音テープ)は、ニクソンの捜査妨害への関与を立証しする決定的な証拠とされ、ニクソン辞任の決定打となった。
*5:現実:ニクソンとJ・エドガー・フーバーは、ニクソンの下院議員時代からの知り合いであり友人であった。
*6:現実:ハリー・ロビンス・ハルデマン(ホールドマン)はニクソンの1956年と1960年の選挙運動にも加わっており、1968年の選挙では選挙参謀長となっている。ジョン・アーリックマンはハルデマンの学友であり、1960年の選挙からスタッフに加わり、1968年の選挙ではハルデマンと共にニクソンに最も近いスタッフの一人となっている。チャールズ・コルソンは1968年から選挙運動に関与している。
*7:現実:ハーバート・クラインは、1940年代から対報道関係の専門家としてニクソンのために働いている。
*8:現実:ジェブ・マグルーダーは、1968年の選挙ではカリフォルニアの運動責任者ボブ・フィンチの下で働いていた。
*9:現実:奇妙な姓からすると、モデルはニクソンの友人ロバート・アプラナルプ Robert Abplanalp か? 第6回も参照。
*10:現実:ジョン・ミッチェルは、1967年に自身の法律事務所とニクソンの属する法律事務所が合併したのをきっかけに友人となり、1968年の選挙運動の責任者に就任する。
*11:現実:ヒュー・スローンは、共和党全国員会財務委員会のメンバーを経て、ニクソン=アグニュー陣営の財務担当補佐。
*12:現実:ジョン・ディーンが選挙運動中からニクソン陣営に関与していたか否かは文献では確認できなかった。彼の自伝『陰謀の報酬 Blind Ambition』も、司法次官補をつとめていたディーンが、1970年5月にイージル・クロー(Egil Krogh)によりホワイトハウス・スタッフになるよう誘われる場面から始まる。
*14:現実:ヘンリー・キッシンジャーは、ハーバードで教鞭をとり、1968年の大統領選挙では、共和党の有力候補者の一人、ニューヨーク州知事ネルソン・ロックフェラーの外交問題顧問を務めていた。
*15:現実:ニクソンは1968年8月のフロリダでの共和党大会で指名を獲得した。
*16:現実:選挙は1968年11月5日。民主党の候補ヒューバート・ハンフリーは終盤に追い上げをみせ、得票数の差は僅かであった。11月6日昼前になり主要メディアがニクソン勝利を伝え、ハンフリーが敗北宣言。その後、ニクソンがニューヨークのホテルで勝利演説を行った。劇中、モンクトンが対立候補ギリー陣営との和解の件を演説原稿から削除したとあるが、確かにニクソンの勝利演説にはハンフリーへの同情を示す箇所や国民に団結を訴える箇所はあるが、和解というニュアンスは薄い。
権力と陰謀のキャスト
2008年4月15日の日記(id:makinohashira:20080415#p1)に載せたものの改訂版
このドラマでカール・テスラー役を演じた俳優ハロルド・グールドの死を悼んで。
原題:Washington: Behind the Colosed Doors
(ABC/Pramount Television 1977年秋放映)
http://www.imdb.com/title/tt0075597/#comment
邦題:権力と陰謀 大統領の密室
(NHK 1978年夏放映)
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=7274
全6話
第1話「栄光の椅子」
第2話「機密漏洩」
第3話「盗聴指令」
第4話「不法侵入」
第5話「最後通告」
第6話「対決」
キャスト表
役名 | Character | 劇中での地位 | モデル | Model | 演者 | Actor/Actress | 吹き替え |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ウィリアム(ビル)・マーチン | William Martin | CIA長官 | リチャード・ヘルムズ | Richard McGarrah Helms | クリフ・ロバートソン | Cliff Robertson | 瑳川哲朗 |
リンダ・マーチン | Linda Martin | ビル・マーチンの妻 | ? | na | ロイス・ネトルトン | Lois Nettleton | 馬淵晴子 |
サリー・ウォレン | Sally Whalen | ビル・マーチンの愛人 | ? | na | ステファニー・パワーズ | Stefanie Powers | 江波杏子 |
サイモン・キャペル | Simon Cappell | ビル・マーティンの補佐官 | ? | na | アラン・オッペンハイマー | Alan Oppenheimer | ? |
バーニー・ティベッツ | Bernie Tibbetts | CIA職員 | ? | na | リック・ゲイツ | Rick Gates | ? |
エスカー・スコット・アンダーソン | Esker Scott Anderson | 前大統領 | リンドン・ベインズ・ジョンソン | Lyndon Baines Johnson | アンディー・グリフィス | Andy Griffith | 佐野浅夫 |
マルタ・アンダーソン | Marta Anderson | アンダーソン前大統領の妻 | レディ・バード・ジョンソン | Lady Bird Johnson | ダナ・ハンセン | Danna Hansen | ? |
リチャード(ディック)・モンクトン | Richard Monckton | 大統領 | リチャード・ニクソン | Richard Milhous Nixon | ジェイソン・ロバーズ | Jason Robards | 西村 晃 |
モンクトン夫人 | Mrs Monckton | モンクトンの妻 | パトリシア・ニクソン | Patricia Nixon | ジューン・デイトン | June Dayton | ? |
フランク・フラハーティー | Frank Flaherty | 大統領補佐官=首席 | ハリー(ボブ)・ハルデマン(ホールドマン)又はジョン・アーリックマン(注1) | Harry Robbins Haldeman or John Ehrlichman | ロバート・ヴォーン | Robert Vaughn | 田口 計 |
タッカー(タック)・タルフォード | Tucker "Tuck" Tallford | 大統領補佐官(又は特別顧問) | チャールズ・コルソン(注1) | Charles "Chuck" Wendell Colson | ジョン・レーン | John Lehne | ? |
ローレンス・アリソン | Lawrence Allison | 大統領補佐官=内政担当 | ジョン・アーリックマン(注1) | John Daniel Ehrlichman | フランク・マース | Frank Marth | ? |
カール・テスラー | Carl Tessler | 大統領補佐官=国家安全保障担当 | ヘンリー・キッシンジャー | Henry Alfred Kissinger | ハロルド・グールド | Harold Gould | 穂積隆信 |
ボブ・ベイリー | Bob Bailey | モンクトンの古参選挙スタッフ/ハンク・フェリスの前任の報道担当 | ハーバート・クライン ?(注2) | Herbert Klein ? | バリー・ネルソン | Barry Nelson | ? |
ドロシー・ケンプ | Dorothy Kemp | モンクトンの秘書 | ローズ・メアリー・ウッズ | Rose Mary Woods | ジーン・キャメロン・ハウエル | Jean Cameron Howell | ? |
ジミー・バード | Jimmy Bird | フラハティの補佐官 | ドワイト・チャピン(注3) | Dwight L. Chapin | ジョセフ・ハッカー | Joseph Hacker | ? |
ロジャー・キャッスル | Roger Castle | 大統領法律顧問 | ジョン・ディーン(注4) | John Wesley Dean III | デイヴィッド・セルビー | David Selby | 伊武雅刀 |
ジェニー・ジェイミソン | Jennie Jamison | ロジャーの恋人/連邦証券取引委員会(SEC)に就職 | ? | na | メグ・フォスター | Meg Foster | ? |
イーライ・マッギン | Eli McGinn | SEC職員=ジェニーとワンダの上司 | ? | na | ペーター・コフィールド | Peter Coffield | ? |
ワンダ・エリオット | Wanda Elliott | SEC職員=ジェニーの同僚/後に再選委員会職員 | ? | na | ララ・パーカー | Lara Parker | ? |
アダム・ガーディナー | Adam Gardiner | 大統領再選委員会財務部長 | ヒュー・W・スローンJr. | Hugh W. Sloan, Jr. | トニー・ビル | Tony Bill | 石田太郎 |
ポーラ・ストーナー・ガーディナー | Paula Stoner Gardiner | アダム・ガーディナーの妻/TVプロデューサー | ? | na | フランシス・リー・マケイン | Frances Lee McCain | ? |
ハンク・フェリス | Hank Ferris | 報道担当/後に大統領再選委員会副責任者(副委員長) | (ロン・ジーグラー)/ジェブ・マグルーダー(注2) | Ronald Louis Ziegler/Jeb Stuart Magruder | ニコラス・プライアー | Nicholas Pryor | 曽我部和行 |
キャシー・フェリス | Kathy Ferris | ハンク・フェリスの妻 | ? | na | ダイアナ・ユーイング | Diana Ewing | ? |
マイロン・ダン | Myron Dunn | 財務長官/大統領再選委員会責任者 | ジョン・ミッチェル(注5) | John Newton Mitchell | ジョン・ハウスマン | John Houseman | 田中明夫 |
ブルースター・ペリー | Brewster Perry | 大統領再選委員会(財務)委員長 | モーリス・スタンズ | Maurice Hubert Stans | ジョージ・ゲインズ | George Gaynes | 中村正 |
アレックス・コフィー | Alex Coffee | 大統領再選委員会でのハンク・フェリスの部下 | ドナルド・セグレッティ ?(注6) | Donald Segretti ? | マイケル・アンダーソン・ジュニア | Michael Anderson Jr | ? |
ピーター・オジマンディアス | Peter Ozymandias | 実業家=航空機産業 | ロバート・アプラナルプ ? | Robert Abplanalp ? | ジョセフ・シローラ | Joseph Sirola | ? |
ベネット・ローマン | Bennett Lowman | 実業家=ホテル・カジノ経営 | ジョージ・ファーカス ?/ロバート・ヴェスコ ? | George Farkas? or Robert Lee Vesco ? | ジョン・ランドルフ | John Randolph | ? |
アニー・マリー・ローマン | Anne Marie Lowman | ベネット・ローマンの妻 | ルース・ファーカス | Ruth Lewis Farkas | メアリー・ラロッシュ | Mary LaRoche | ? |
アシュトン | Ashton | ベネット・ローマンの顧問 | ? | na | ジョン・カー | John Kerr | ? |
ラース・ハーグランド | Lars Haglund | 元CIA/タルフォードとアリソンの配下の工作員 | E. ハワード・ハント(注7) | E. Howard Hunt | スキップ・ホメイヤー | Skip Homeier | ? |
ウォルター・タロック | Walter Tulloch | 元軍諜報部員/タルフォードとアリソンの配下の工作員 | ゴードン・リディ(注7) | G. Gordon Liddy | フィリップ・R・アレン | Phillip R Allen | ? |
ハーヴィー・バス | Harvey Bass | 私立探偵=タルフォードとアリソンの配下 | トニー・ウラセヴィッチ 又は ジョン・コールフィールド ?(注8) | Tony Ulasevicz or John Caulfield ? | マディスン・アーノルド | Madison Arnold | ? |
バート・サラシニ | Burt Saraceni | 私立探偵=タルフォードとアリソンの配下 | トニー・ラロッコ ? | Tony LaRocco ? | ボラ・シルヴァー | Borah Silver | ? |
エルマー・モース | Elmer Morse | FBI長官 | J. エドガー・フーバー | J. Edgar Hoover | セイヤー・デイヴィッド | Thayer David | ? |
ジャック・アサートン | Jack Atherton | 上院議員 | J. ウィリアム・フルブライト ?(注9) | James William Fulbright ? | リンデン・チャイルズ | Linden Chiles | ? |
ジョー・ウィズノフスキー | Joe Wisnovsky | 「ワシントン・プレス」紙の記者 | ボブ・ウッドワード/カール・バーンスタイン | Bob Woodward & Carl Bernstein | バリー・プリマス | Barry Primus | 久富惟晴 |
シド・ゴールド | Sid Gold | 人権団体の代表 | ? | na | フレッド・サドフ | Fred Sadoff | ? |
ウィリアム・アーサー・カリー | William Arthur Currie | 元大統領 | ジョン・F・ケネディ | John F. Kennedy | (名前のみ言及) | na | na |
エド・ギリー | Edward Gilley | アンダーソンの副大統領/大統領候補者 | ヒューバート・ハンフリー | Hubert Horatio Humphrey, Jr. | (名前のみ言及) | na | na |
フォービル | ? | 上院議員/予備選でのモンクトンの対立候補 | ネルソン・ロックフェラー(注10) | Nelson Aldrich Rockefeller | (名前のみ言及) | na | na |
ジョナサン・グリーン | Johnathan Green | 盗聴工作の対象者 | ? | na | (顔写真と名前のみ) | na | na |
アーサー・ペリーン(パライン) | Arthur Perrine | 盗聴工作の対象者 | ? | na | (名前のみ) | na | na |
ダーウッド・ドリュー(注12) | ? | ビル・マーチンがモンクトンに推薦した次期長官 | ウィリアム・コルビー ?(注11) | William Colby ? | (名前のみ言及) | na | na |
メリマン | Merriman | 次期大統領立候補者の一人 | エドマンド・マスキー ? | Edmund Muskie ? | (顔写真と名前のみ) | na | na |
注1:フラハティー、アリソン、タルフォードは、ハルデマン(首席補佐官)、アーリックマン(内政担当補佐官)、コルソン(大統領特別顧問)に明確に対応するというわけではない。フラハティーは首席補佐官なのでハルデマンであろうが、ドラマの中では重要な役柄であり、実際にフラハティーを演じたロバート・ボーンがエミー賞(ミニシリーズドラマ助演男優)を獲得していることなどを考えると、原作者であるアーリックマンの姿が投影されているとも考えられる。アリソンはこのドラマの中で影が薄い。タルフォードの位置づけが微妙だが、アリソンとタルフォードではアリソンの方が地位が上のようであること、タルフォードはハーグランドらの活動により直接的に関与していること、役名「タック・タルフォード」と「チャック・コルソン」の類似から、ここではタルフォード=コルソンとした。しかし、例えば実際のウォーターゲート事件の際にニクソンの意を受けてCIA長官ヘルムズに圧力をかけたのはハルデマンであり、こうした姿は劇中のタルフォードと重なるようにも思われる。
注2:劇中、ボブ・ベイリーは20年来のモンクトンの選挙スタッフであり、大統領選挙中は渉外広報担当、モンクトンの大統領就任後も報道関係を担当するが、比較的初期の段階でフラハティと対立し辞任している。現実のハーバート・クラインは1973年までホワイトハウスを含む行政庁全般の報道担当をつとめているが、辞任以前から政権内での影響力は低下していたとされるので、ベイリー=クラインとみてよいだろう。他方、劇中、ハンク・フェリスはホワイトハウスでのベイリーの補佐役として出発し、ベイリーの辞任後の後任を経て、大統領再選委員会の副責任者=マイロン・ダンの補佐(吹き替えではブルースター・ペリー「委員長」の下での副委員長)になるので、ほぼ現実のジェブ・マグルーダーの経歴と重なりそうである。
注3:フラハティの補佐として大統領執務室への人の出入りを取り仕切っていること、若く長身でハンサム(?)ということから、モデルはドワイト・チャピンとした。
注4:劇中のロジャー・キャッスルにはジェニー・ジェイミソンという恋人がいる(最終的には破局)が、実際のディーンには美しい妻がいた。この妻が議会の公聴会で夫を見守る姿が、議員や国民のディーンへの心証を良くする方向に作用したと言われる。
注5:実際のミッチェルは財務長官ではなく司法長官ののち大統領再選委員会(CREEP)の責任者。
注6:劇中アレックス・コフィーはハンク・フェリスの面接を受けて部下になり、モンクトンの対立候補を貶める「汚いトリック」を行う。実際に「汚いトリック」の中心となったのはドナルド・セグレッティだが、彼はドワイト・チャピンの肝いりで再選委員会入りしている。
注7:劇中の最後にハーグランドとタロックはメリマン事務所侵入の実行犯として逮捕されている。実際のウォーターゲート事件では、ハワード・ハントとゴードン・リディは組織役であり実行犯5人には入っていない。しかし、その他の描写から明らかにハーグランド=ハント、タロック=リディであろう。
注8:いずれもアーリックマンとタルフォードに雇われた(後には再選委員会のためにも働く)「Private Eye」だが、劇中、ハーヴェイ・バスとバート・サラシニはペアで行動しているので、バス=ウラセヴィッチ、サラシニ=ラロッコと見るのが適当か。なお、馬面の方がハーヴェイ・バス、ガムを噛んでいる目のギョロッとした方がバート・サラシニ。
注9:劇中、アサートンは上院外交委員会の有力議員。フルブライトはニクソン時代の上院外交委員長。
注10:ロックフェラーは実際には上院議員ではなくニューヨーク州知事。劇中、カール・テスラーは元々フォービル陣営のアドバイザーであり、これはキッシンジャーがロックフェラーのアドバイザーだったことと重なる。
注11:現実にはヘルムズの後任としてジェームズ・シュレシンジャーが半年ほど長官を務めた後、コルビーが長官となる。コルビーはCIA生え抜きだが、ヘルムズとは異なり改革路線を推し進めた人物なので、ドリュー=コルビーというのは無理があるかもしれない。
注12:吹き替えでは「ディガーウッド・ドリュー」と聞こえる。
修正履歴
2011年1月12日掲載
2011年1月15日修正
・アレックス・コフィー、ハーヴィー・バス:モデルの付記及び注6・注8の挿入→注番号の整理
・アーサー・ペリーン:項目の新設
・メリマン:モデルの付記
2011年1月18日修正
・ベネット・ローマン:モデルの付記
・ピーター・オジマンディアス:モデルの付記
2011年1月22日修正
・ベネット・ローマン、アン・マリー・ローマン:モデルの付記
・第5話の題名
2013年2月9日修正
・ハルデマンの項目のモデル名
・注1の内容
2016年6月5日修正
・ブルースター・ペリーの吹き替えと地位
・ハンク・フェリスの地位、注2の内容修正
・カール・テスラーとジョー・ウィズノフスキの吹き替え(watergaeteさんの情報による)
・注12の追加
・注8の内容
銀河ヒッチハイクガイドの続きとか
最近の娯楽・教養の読書:
- ダグラス・アダムス『宇宙の果てのレストラン』『宇宙クリケット戦争』『さようなら、いままで魚をありがとう』『ほとんど無害』(いずれも河出文庫)・・・前に読んだ『銀河ヒッチハイクガイド』(id:makinohashira:20090904#p1)の続編たち。内容をまとめて感想を書きたいけど、私には難しいかもしれません。第2作までを映像化したイギリスのTVドラマと、2005年に映画化されたものが、それぞれDVDになっているようです。YouTUBEにもあるようです。
- ケイト・ロス『マルヴェッツィ館の殺人』(講談社文庫)・・・1820年代、オーストリア支配下の北イタリアで起こった地元の有力貴族殺害事件をイギリス人貴族探偵ジュリアン・ケストレルが解決する推理もので、当時の政治情勢、それにオペラ歌手のパトロネージュが背景になっています。音楽絡みということで買って読んでみました。原題は『音楽の悪魔』で、この原題のまま方が内容と繋がっていて良かったのに。面白かったのですが、「犯人以外の者はやっていない・不可能だった」という点の論証に注意が払われていないように思えます。まあ、そこを厳密にやろうとすると、コリン・デクスターのパズルみたいな小説になってしまうのでしょうけれど。
- スチュアート・ホワイト『英国王女を救え』(二見文庫)・・・ラインハルト・ハイドリヒにより、二人の王女を誘拐してきて英国の戦意を喪失させようという計画が立てられ、その下準備のためにバトル・オブ・ブリテン前夜の英国にSDのスパイが潜入します。計画を知ったヒトラーは当時未参戦のアメリカを刺激することをおそれて計画を中止させますが、このSDのスパイ(少年期を英国で過ごしたことがあり英国人を憎悪するとんでもない変態サディストという設定)が中止命令をきかずに暴走して王女達の暗殺を企てる事態に。彼を止めるために、ヒトラーとチャーチルの協定により(!)国防軍防諜部の大佐が英国に送られ、スコットランド・ヤードの警視と一緒に奔走しますが・・・という、荒唐無稽もここに極まれりというお話。スパイものは荒唐無稽な設定も含めて楽しまないといけないのでしょう。あるいはナチのSSやSDという組織は、「王女を誘拐してくれば国王も国民も戦意喪失間違いなし!」なんていう考えが本気で成立してしまいそうな所だったんでしょうか。
- Tony Le Tissier "THE SIEGE OF KUESTRIN, 1945"・・・ベルリンの東方、オーデル河畔にある交通の要衝キュストリンの攻囲戦のドキュメンタリー。様々な生存者の証言のコラージュの合間に簡単な全体像の説明が入るという構成で、確かに証言の部分は生々しくて興味深いのですが、時系列も場所も整理されておらず非常に読みにくい本でした。地図は結構豊富に挿入されていますが、正確さに欠けたり本文の記述と矛盾があったり。ちなみに、著者自身も序文で書いてますが、この本の大部分は、Fritz Kohlaseの自費出版の証言集とHermann Thramsの自らの日記をベースにした書物が元ネタで、ほとんどその翻訳(しかも英語として非常に読みにくい)みたいなもののようです。この著者は第二次世界大戦末期についていくつか著作があるようですが、きちんとした歴史家・戦史家ではないようですね。
それにしても
4年の間にイヤホンやヘッドホンの世界は大きく様変わりしていました。
買い物依存的な状態から脱する一番の方法は、満足のいくものを見つけたら(←そこまでに無駄遣いをしてしまう場合も多いのですが)あれこれ他を見ないという簡単なことです。なので、E3cを買ってからこの種のモノに関する情報にはほとんど接していませんでした。今回、E3cを修理に出すかどうかであれこれ考えて情報を集める中で、自分が今浦島状態に置かれていることがわかりました。以前はBA方式のカナル型なんてER-4かShureくらいしかなく(というのは言い過ぎか?)、しかもER-4なんて目玉が飛び出すほど高かった記憶がありますが、今や国内メーカーも含めて選択肢も増え、ER-4も手の届く値段になっています。ポータブルなヘッドホンアンプも本当に持ち歩けるサイズと重さのものが出ていて楽しそう。
E3c(SCL3)なんてすっかり過去のものなんですね。いつかこの交換品のSCL3が壊れたら、買い換えを考えましょう。
交換
修理に出したShureのE3cですが、新品交換という形で戻ってきました。E3cはディスコンなので後継機種のSCL3(でも実体はE3cそのままらしいですが)というのです。保証期間はとうに過ぎているので無論有償。
修理依頼から1週間ほどで見積書が届き、新品交換に同意ということで返信して、10日以上経っても音沙汰がないのでサービスセンターに電話すると、「いま店舗に輸送中」ですって。蕎麦屋の出前かい。で、電話した日の夜にお店から交換品到着の連絡。
全部で3週間ほどかかったことになります。
この3週間で改めて認識しました。私が最も必要としているのは遮音性でした。
昔使っていたイヤホンや屋内用の密閉型ヘッドホンまで持ち出してみましたが、電車内のおばちゃん達(おばちゃん予備軍たる女子学生・生徒を含む)のお喋りが耳を突き刺す・・・。人間嫌い気味の私の通勤のお供は、もはやカナル型イヤホンしかありません。4年半でそんな体質になってしまっていました。