ゴダード小休止

 ロバート・ゴダードの「悠久の窓」は昨年末の内に読み終え、今は小休止状態です。って100円コーナーに見あたらないだけなんですが。
 「悠久の窓」は、何が起こっているのか・次に何が起こるのか・動機は何なのか、よく解らないままに読み終えてしまいました。「タントリス」には含意はなかったものの、話はロードス騎士団と十字軍、そして聖杯伝説へとつながって、何だかダン・ブラウンの「ダヴィンチ・コード」的に・・・でも、「ダヴィンチ・コード」では主人公達の行動のその時その時の動機付け(このパズルを解いて、次はここ)は明確なのに対して、ゴダードの「悠久の窓」ではそれがよくわかりません。「ヴェネツィアに行けば何か判るに違いない」みたいな話に乗っかって行くしかないのです。で、主人公の父が守ろうとした秘密はちゃんと最後に明かされるのですが、非キリスト教徒である私には、その重大性が今ひとつピンと来ません。
 非常に我が儘ですね。わかり易ければ文句をつけ、わかり難くても文句をつける。ゴダード作品をさほど読み込んでいない段階で言うのはなんですが、最近の作品よりも初期の作品の方が濃い味わいがあって面白いような気がします。例えば「リオノーラの肖像」なんか、謎に対する答えは見破りやすいけど、背景や登場人物の造形と感情の揺れなど、非常に面白く余韻のある作品です。作品とは関係ありませんが、何故第二次世界大戦直前にネヴィル・チェンバレンの宥和政策が一時的にしろ支持されたのか、それは第一次世界大戦の傷跡が余りにも深かったからではないのか、そんなことにも思いを致してしまいます。
 もちろん、「悠久の窓」もかなりのスピードで最後まで読み切ってしまいましたので、読ませる力という点では十分なものがあるのでしょうけれど。

断線

 気がつけば4年半ほど使ってきたSHUREカナル型イヤホンE3c。とうとう断線寸前になりました。右側のコードというのかケーブルというのか、そのちょうど耳の前側に当たる部分の皮膜に秋頃に亀裂が入り、それが徐々に広がって、今年に入って音がとぎれるようになってしまいました。しばらく情報収集していなかったので、Webを検索してみると、耳にコードを掛ける装着方法(いわゆる「シュア掛け」)だと、皮脂などの影響でコードの皮膜が割れることがあるようです。極端な話だと半年で割れたとか何とか・・・
 私のは、平均して週5日で1日あたり4時間ほど春夏秋冬4年半(クラックが入り始めるまでとしても4年と少し)、脂ぎったおっさんが使い続けたわけですから、寿命と考えるべきでしょう。


 何故右耳側が割れたのか。E3cのコードは左右均等のY字型で、私はこれを繋いだiPodを左の胸ポケットに入れることが多かったので、右耳側にテンションがかかりやすく、右のコードは耳の周辺に密着した状態に成りやすかったのが原因でしょう。それと、使っていくとコードに癖がつくのですが、右耳側のコードには変な捩れが生じてしまったこともあるかもしれません。
 逆に、手入れらしい手入れもせずに、何故4年半ももったのか。繰り返しになりますけど、ホント脂ぎったおっさんで、メタボ気味で夏は汗だくです。そんなおっさんに使われたのに4年半というのは、ネット上の評判からすれば奇跡のようにも思えます。思い当たるのは

  • E3cはコードが長いこともあって、そもそもコードにテンションを掛けないようにユルッと使っていたこと。特に左耳の方はコードが少し浮くような感覚でした。(コードが耳の裏で動くのはさほど不快ではないし、本体はしっかり外耳に挿入していれば安定しています。)
  • メガネ男子というか眼鏡オヤジなので、眼鏡のツルとの関係で耳掛けしたコードが肌に触れる部分がそもそも少なかっただろうこと。[20100111追記]
  • 上でも書いたように、コードには徐々に癖がつき、また2年経つ頃からはコード皮膜が硬化してきたように思うけど、無理矢理伸ばしたり曲げたりせず、癖がついたらついたなりに使っていたこと。最初は使わないときは付属のケースに入れていましたが、途中からは面倒なのでやめて、Y字の下の太いケーブルは5センチほどの直径に巻き、上の枝分かれした部分は大雑把にクシャッと丸めて、外力が加わりにくい場所(着衣の胸ポケットや鞄の外ポケット)に入れていました。
  • 引っかけたり余計な力を加えるようなことはほとんどなかったこと。粗忽な私が、別に気をつかったわけではないのですが、4年半のあいだ大きな「事故」は起きませんでした。

本当にこれらが要因なのかはわかりません。特に2点目はどうなのか。
 というか1年で断線とかって人は、もしかして1日8時間くらい使ってるってことなのかな。


 さて、コードが割れたけど長持ちした原因を考えるのも重要ですが、それをしながら「次」を考えなければなりません。できればこのE3cを修理して使い続けたいという気持ちはあります。様々な曲を素直にかつ綺麗に鳴らしてくれますから。E3cの柔らかな透明感に慣れてしまうと、他のイヤホンに乗り換えるのが冒険に思えて躊躇してしまいます。上位機種であったE4や同じSHUREの比較的新しいSEシリーズはもっと凄いと言われても、聴いたことがない以上は何とも・・・
 しかし、困ったことにE3cはディスコンのようだし、4年以上も経ってるし、もう有償でも修理してもらえないかもしれません。その前に、購入時の箱や保証書が見つかりません。見つかったとしても、正規の代理店経由の品物だったかどうか(そもそも4年半前に代理店ってあったのかな?)、購入時の記憶が曖昧でわかりません。
 ここは買い換えでしょうか。悩ましいところです。選ぶとすればSHUREの現行機種でE3cと同傾向で同等以上のもの、とすると(同傾向かどうかはよくわかりませんが)SE310、SE420、SE530あたりでしょうか。予算の制約を考えればSE310かSE420。SE420は2Way・2ユニットらしいですね。音の繋がりはどうなんでしょう。
 少し気になるのが、コードが圧倒的に短くなっている点です。40センチ程度では胸ポケットにも届かず延長コードをつけることになりますが、この接合部分の重みなどを考えると、コードにテンションがかかりそうです。とすると、上に書いたE3cを長持ちさせたかもしれない要因の1が成り立たなくなるおそれがあります。この辺は使ってみないと判らないですね。
 今年の半ばにはSE420・SE530のユニットを刷新してコードを着脱式にした新タイプが出るらしいですが、それまでイヤホン無しで待つわけにもいかないし。
 困った困った。さても困りました。


20100113追記:
 必死の捜索によりE3cの箱や保証書が見つかりました。正規の代理店経由の品物でした。保証期間はとうに過ぎているけど、修理に出してみることにしました。
 購入店に持って行き見積もりをお願いしようとすると・・・預けるだけで3,500円?修理をする場合には修理代に充当されるらしいけど、見積もり聞いて修理やめますという場合は3,500円没収ですって。見積もりの結果出てきた修理代が新品買えるほど高かったら泣くしかありません。
 でも愛着あるし・・・でも断線だけじゃなくてユニット自体が劣化してるかもしれないし・・・でもこのままにするのは勿体ないし。
 少し悩みましたが、結局預けてきました。どうなることやら。

今年は?

 こんなに疲れた年末年始は かつてなかったかも。


 昨年の目標達成度の検証は、まあ無駄なのでやめておくとして、今年の目標は:

  • 本当に使う物しか買わない
  • 貯金をする
  • 体重を減らす

なんだか小学生レベルの即物的なもので、泣けてきます。それに、日本の景気回復には貢献できそうもありません。


 今年は去年より少し頑張ろう。

ファーザーランド

 ロバート・ハリス「ファーザーランド」(文春文庫)も100円コーナーで発見。
 どこかで聞き覚えがある著者名と思ったら、前に読んだ「ポンペイの四日間」の人でした。


 中身は英語版Wikipediaに書かれていたように、TV映画とは大幅に違っていまして、主人公のマルヒがそもそもあまりナチに忠実ではなく人事考課上危うい立場にいるとか、もう一方のシャーロットはジョセフ・ケネディ(小説中では反ユダヤ的な面が指摘されています)が大嫌いだといった、人物に関する背景が描かれている点が大きいでしょう。マルヒの周囲の人間の描き方、例えばアルトゥール・ネーベという存在の謎や、他にも同僚刑事やUボート時代の元部下など、やはり2時間ほどの映像では切り捨てられてしまう要素も多いわけです*1
 小説ではTV映画と違い二人は元外務次官マルティン・ルターとなかなか接触できず、彼の足跡を追ってスイスまで出かけて行きます。これは、二人のロマンスを描くため、あるいはそこで発見されるものを巡り物語に奥行きを与えるためなのでしょうが、少し冗長な感は否めません。
 また、最後の結末も全く違っており、この点は小説の方が緊迫感があり、TV映画の方が判りやすさ優先で安易な処理になっていると思います。
 TV映画でも小説でも、結末近くでマルヒは最大の「裏切り」にあい、結局それが命を落とすことに繋がります。この「裏切り」はナチスの支配する社会の暗さを象徴していて、だからこそTV映画もこの要素を落とさなかったのでしょう。もっとも、「裏切り」に関する流れはTV映画と小説では異なり、小説の方は不自然です。優秀な捜査官であるマルヒが、たとえ感情を抑えることが難しいであろう場面であっても、みすみす罠に嵌るような行動をとるとは考えられないからです。


 細かい点。小説の翻訳では、親衛隊の階級「Gruppenführer」を「師団指揮官」と訳しており、訳者もあとがきでわざわざ解説までしています。確かに中将相当が「Gruppenführer」、大将相当が「Obergruppenführer」で、師団長には中将が充てられるので間違いではないのかもしれませんが、武装親衛隊に限らない一般の親衛隊の呼称なのですから、やはり「集団指導者」という定着した訳語*2の方が良かったのではないでしょうか。

*1:TV映画でははっきりしなかったのですが、小説ではヨーザフ・ビューラー、シュトゥッカート、ルターの他に、フリードリヒ・クリツィンガーも3人と連携しており、ビューラー殺害より先に爆殺されていることになっています。

*2:翻訳が刊行された当時を考えても、既にこの訳語の方が一般的だったはずです。

ゴダード微妙

 講談社文庫でゴダードの翻訳が出ているのを知ったので、ブックオフに寄る度に100円コーナーを確認。早速「眩惑されて」と「悠久の窓」を買ってきました。前者を読み終え、後者の下巻に入ったところです。


 正直いって「眩惑されて」は微妙です。かなりのありきたり感が漂います。ただ「こじれた事態にどう決着をつけるのか」に惹かれて読み進むことは、苦痛ではありません。読み方としてはそれだけでも良いのかもしれません。でも、これ、決着がついているのかどうか・・・。「組織」はこれで安心したり諦めたりはしないと思うんだけど。
 年に1本じゃアイディアも枯れていくだろうし、大変なんだろうなぁ。
 毎度セコい話ですが、もう少し活字小さくすれば上下二巻に分ける必要なんてないんじゃないかな。定価で買ってたら割高感があると思います。


 「悠久の窓」は何が起きているのか訳がわからんまま、興味津々で読めています。「タントリス」(とそれを読者に説明させるための登場人物間の諄いやりとり)には失笑ですが、これには更に隠された意味があるのでは?と期待しています。

手帳の見直し

 手帳をシステマティックに書けば日々の暮らしや人生が変わるなんて幻想は抱いておりません。(前にも同じようなこと書いた気がします。)
 が、歳のせいか生来の欠陥なのか、もの忘れが酷く、日々を無事に過ごすという最低限の水準を満たすためにも手帳様は欠かせません。毎日お世話になる手帳様なので「しっくり」くるものを選びたい、というのが煩悩の始まりでございましょう。


 毎年それなりに考えるものの、考えすぎたり矢鱈と試し買いしたりは無駄、ということで、2010年も基本はMoleskineのDaily Diaryになりました。Amazonの洋書のカテゴリーだと安く買えるというのも判りましたので。時間軸が8時始まりというのだけが不満です。「ほぼ日」は毎年比較検討対象なのですが、大きさ・重さとお言葉の存在が大きくマイナスに作用します。


 さて、基本はMoleskineとして・・・加齢による怠け癖(と腰痛)は、時折「Moleskineでも重い」などと思わしめることとなり・・・毎年9月頃になると翌年1月以降のスケジュールもバンバン入ってきて、その年分と翌年分の2冊のMoleskineを持ち歩くのもしんどいななどとも考え・・・昨年からサブの9月始まり18ヶ月の週間手帳を併用するようになりました。荷物を軽くしたいときはサブだけを持ち出し、しっかりした鞄で仕事モードの時は両方という使い方です。このサブの手帳、昨年のものは「しっくり」こず、今年は雑貨屋さんで偶々手にとったCoated Design Graphicsというところの縦に細長いものを使っています。さらに、1月始まりですが、コクヨのキャンパスノートの週間ダイアリーも試そうかと買ってきました(試し買いは無駄だって書いたのにねぇ)。両方とも見開き1週間で、土日も平日と同じスペース。土日が変形で狭かったりするのは駄目なのです。
 Coated Design Graphicsの方は見開き左頁4等分・右頁4等分で、左頁上に月表示と月間カレンダー、その下から月〜水、右頁に上から木〜日が配置され、一日の記入スペースは縦42mm横55mmほど。日付表示の横にその日全体の予定を書き、その下に午前3件、午後5件ほどの個別の予定を、時間・件名・場所と記入するのにぴったり。左頁上の月表示の箇所の空欄がTo Doの欄として使えます。今のところ週間ダイアリーとしては理想的。表紙は紙のハードタイプで、外寸も縦185mm・横67mm・厚11mmで、ジャケットの内ポケットに入れても邪魔にならない大きさです。懸念は、同じ構成のものが毎年発行されていて継続して使うことができるかどうかでしょう。同じ構成・外寸で派手派手表紙のものはよく見かける気がするのですが、今回入手した黒い表紙のものはどうなのでしょう。それから、表紙に変なドイツ語が書いてあるのはマイナス点。これは小さくて目立たないからいいか。
 コクヨのキャンパス・ダイアリーは、大きさが何種類かあるようで、文庫本サイズ(A6)を選びました。厚さは6mmほど。バーチカル式というのかな、時間目盛りは6時から22時で、最大5時から25時まで記入できそうです。一日の記入スペースは、ToDo欄3件分が縦12mm・横30mm、時間目盛りがついてる部分で縦90mm・横30mmで、時間に幅がある予定でないと件名と場所を記入するのが苦しいですね。文字を小さくすると老眼気味の眼に障るし。厚みがないのだからA5サイズを買った方がよかったかもしれません。


 そもそも複数併用は、少し怠けると記入情報にズレが出来たりしますから、うまく運用していけるかどうか、それ自体が一番問題ではあります。手帳の運用なんかに気を遣いたくないですからね。「慣れる」ところまで持って行けるかどうか・・・

ドイツが第二次世界大戦に勝利した世界

 他に読んだ本:
 マリ・デイヴィス「英国占領」(上)(下):レイ・デイトンの「SS-GB」と同じく、ドイツ軍が1940年に英国上陸に成功し英国を占領していたら、という仮想世界のお話。「SS-GB」はスコットランド・ヤードの警視が主人公でした。この「英国占領」は占領軍に通訳として徴用された男が主人公で、レジスタンスの目線で占領下の英国が描かれます。レジスタンス内部の裏切り者は誰か・・・ってこれも読者には丸わかり過ぎですが、その先に更に捻りがあって、ラストは驚愕、あまりに荒唐無稽という。入り口でボディーチェックするでしょ、絶対。
 「SS-GB」に関係する過去の日記は
id:makinohashira:20080812#p2
id:makinohashira:20060817#p3
id:makinohashira:20060823#p1
このときukyarapiさんに教えていただいた、J・ロバート・ジェインズ「万華鏡の迷宮」も読みたいな。
 Robert Massie,"Castles of Steel":第一次世界大戦中の英国海軍(とドイツ海軍)の作戦指導に関する歴史ドキュメンタリーで、同著者の"Dreadnought"の続編に当たると思われます。120頁辺りまで読んで挫折中。チャーチルとかフィッシャーとかジェリコーとかビーティーとか、ゲーベンとかガリポリとかユトラントとか。


 観た映画:
 「謀議(Conspiracy)」これは以前TSUTAYAで借りて観たもので、YouTubeに全部あがっていたのを見つけて見直してみました。ヴァンゼー会議の様子をいわゆる「議事録」から想像して組み立てたドラマです。ケネス・ブラナーはすぐわかるとして、ああ、「バーナビー警部」*1の田舎演劇の回に出ていたホモの本屋のオッサン(ニコラス・ウッドソン(ニック・ウッドソン):ここではホフマンSS中将役)とか、ホース・ウイスパーの回に出ていた異様に太った医者(イアン・マクニース:ここでは党官房のクロプファー局長役)とか、知った顔が出演してます。字幕無しだと半分くらいしか理解できません。お酒と料理に囲まれた優雅な雰囲気の中で、どす黒い内容が非常に事務的・法技術的な観点から議論されていきます。この映画は、そういうことができる人間の怖さを表したかったんでしょう。映画の中でも描かれますが、会議の参加者15人の過半が法学の学位や弁護士資格を持っている人たちだったという点がもポイントです。そんな中で、いわゆるニュルンベルク法の立案者であるシュトゥッカート博士が法解釈の観点(あくまで現行法を前提とした解釈論の観点)からハイドリヒのやり方に抵抗し、総統官房ランメルスの代理であるクリツィンガー博士がそれを支援する姿、それを巧みにかわして望みの結論を手に入れようとするハイドリヒとアイヒマンという対立軸がドラマの本筋でしょう*2
 で、YouTubeの繋がりで、ロバート・ハリスの小説をテレビ映画化したという「ファーザーランド(Fatherland)」も。ここでは戦争に勝った1960年代のドイツが舞台。イギリスには傀儡政権、ロシアとは未だに交戦中*3。で、日本との戦争に勝ったアメリカとは冷戦状態にあり、雪解けが模索されているところ。アメリカ大統領ジョセフ・ケネディ・シニアの訪独を控え、ドイツ国内がアメリカのメディアに解放されます。そんな折、ベルリン郊外の湖でナチ高官ヨゼフ・ビューラーの他殺体が発見され、刑事警察のクサヴィアー・マルヒ(ザビエル・マーチ)が捜査に当たりますが、この事件にはゲシュタポの影が。他方でアメリカ人ジャーナリストのシャーロット・マグワイヤは謎の老人(実は元外務次官のマルティン・ルター)の導きでナチ高官ヴィルヘルム・シュトゥッカートの元を訪れるものの、シュトゥッカートは殺害されています。シュトゥッカートの事件を通じて知り合ったマルヒとシャーロットは情報を交換しながら捜査を進めますが、ルターとの接触や刑事警察の資料から、1942年にヴァンゼーであった会議の出席者が相次いで不可解な死を遂げていることがわかります。ドイツ政府の説明では、ユダヤ人はドイツ国内から排除され、東方に「移住」させられて暮らしているはずですが、ルターが愛人に託して隠し持たせていた資料からは、恐るべき真実が・・・
 ということですが、大規模殺戮を「移住」と偽装して長年隠し続けられるわけないでしょうし、「移住」させられて連絡もできないという状況で、アメリカがドイツと関係改善に乗り出すはずがないと思うのですが。硬いことを言うと小説が成り立たなくなりますけど、ちょっとねぇ。
 そういえば、ノルマンディーで連合軍が敗退するというのは、昔「Dデイの惨劇」でしたか、読んだ覚えがあります。この本はどこぞに眠っていることでしょう。

*1:全然関係ないけど、バーナビー警部のシリーズ「ミッドサマー・マーダーズ」のミッドサマーって、シェークスピアの「真夏の夜の夢」の「Midsummer」じゃなくて、イギリス中部のどこにでもある田舎ってニュアンスの「Midsomer」なのですね。今まで知らなかった。

*2:クリツィンガー博士は、一説にはヴァンゼー会議の内容に絶望し会議後に辞職を申し出たけれども慰留されて果たせなかったとも言われているようです。

*3:ドイツ勝利のきっかけは、映画では、ノルマンディー上陸作戦が失敗したこと。小説は読んでいないので、英語のWikihttp://en.wikipedia.org/wiki/Fatherland_(novel))に頼ると、小説では1.1942年に東部戦線でコーカサスの油田地帯を攻略し、スターリンウラル山脈東方に追いやったこと、2.エニグマ暗号が漏洩しているのを察知してそれを逆手にとって、英国の海上封鎖を完成させ1944年に屈服させたこと、3.1946年にV-3大陸間弾道ミサイルをニューヨーク上空で炸裂させ、この示威行動によりアメリカとの間に講和条約を結んだこと、だそうです。